2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16817
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池田 晋 筑波大学, 人文社会系, 助教 (40568680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中国語 / 文法 / 構文 / 重複表現 / 重畳形式 / 主題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、まず継続課題として疑問詞連鎖構文(「誰先回家誰作飯。(誰かが先に帰宅すれば、その誰かが食事を作る)のような前後で同一の疑問詞が呼応し同一の対象を指す構文」)について分析を深め、その成果を学術論文の形にまとめ上げることを目指した。分析の結果、この構文は1種の複文として、類似の意味関係を表す他の複文と関連付けて捉えられるべきものであり、それらの用法の対比の中で独自の特徴が浮き上がってくるという見解に達した。即ち、類義複文である無条件複文「無論~都…(たとえ~であろうと…)」は、前件に変項が含まれ、その値の如何にかかわらず同一の帰結が導かれることを表すものであるが、疑問詞連鎖構文の場合は、前後件の双方に変項が含まれ、前件の内容に応じて後件の帰結も変化するところにその特徴がある。簡潔に言えば、無条件複文の前後件が「多対一」の関係にあるのに対し、疑問詞連鎖構文の前後件は「多対多」の関係にあるということであり、当該構文の用法はこの「多対多関係」をもって説明することができる。この成果は、平成29年12月に論文としてまとめて「ことばとそのひろがり(6)」に投稿、平成30年3月に刊行された。 また、平成29年7月に刊行された『楊凱栄教授還暦記念中日言語研究論叢』に論文「仮想的相互関係を表す疑問詞呼応構文について」が掲載された。 平成29年度の後半は形容詞を用いた新興の表現形式「A就A在~(Aであるのは~という点においてだ)」の調査にも着手した。この構造は形容詞を用いた重複表現である点、主題標示という機能上の要請から重複が生じているという点で、疑問詞を用いた重複表現とは異なっている。この構造の分析を通して、重複表現のまた別の側面が明らかになることが期待される。なお、この構造に関する基礎調査結果については、平成30年3月に開催された第38回中国語文法研究会で中間報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、前年の疑問詞呼応構文に関する研究成果と、継続課題であった疑問詞連鎖構文についての研究が、いずれも学術論文の形で刊行されたことに加えて、新たに「A就A在~」構造の調査に着手することができた。なお、当初は動詞コピー構文と呼ばれる「VOV+補語等」形式の研究を行うことを予定していたが、平成29年度までに国内で新たな研究論文が発表され重要な知見が示された。そのことを受けて、研究対象を同じく主題標示との関わりを持つ「A就A在~」構造に切り替えることとした。そうした経緯はあるものの、おおむね当初の予定通り研究を進めることができている。 加えて、例文のデータベース化作業にも着手しはじめ、収集した用例の一部を電子化することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、まず継続課題である「A就A在~」についての分析を早急にまとめあげ、7月に泉州師範大学(中国・泉州市)で開催予定の第八届現代漢語虚詞研究与対外漢語教学国際研討会で研究発表を行う予定である。更にそこでの討論をもとに加筆・修正をおこない、年度中に学術論文として国内学会誌等に投稿することを目指す。また、3年間の研究期間として、現時点での中国語重複表現と重畳形式についての見通しをまとめるとともに、それらの連続性・共通性をより明確にするために今後どのような調査を行っていく必要があるかを検討する。 例文のデータベース化作業については、予定のペースよりはやや遅れているので、夏季休暇中に短期雇用の学生を増員するなどして、作業ペースを上げ、収集した例文の完全電子化を図る予定である。
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Causes of Carryover |
例文電子化作業がやや遅れているため、最終年度の夏季休暇期間を利用して作業を本格化させる見通しである。短期雇用を担当する大学院生を1~2名増員するなどして作業の迅速化を進めることを予定しており、平成29年度に発生した次年度使用額についてはその短期雇用増員のための人件費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)