2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16823
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
嶋村 貢志 立命館大学, スポーツ健康科学部, 任期制講師 (00755689)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 統語論 / 意味論 / 引用構文 / 補文構造 / 日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は、引用構文の分析を中心に行った。「と」の分布で、生成文法の枠組みではあまり議論されていなかった「と」を共なうデータとしてオノマトペなどのいわゆる象徴性の高い要素を副詞として使用するものがあり、例えば「岩がドスンと落ちる」のようなものがある。他にも名付け構文における「と」にも着目し、「と」が補文標識であるというこれまでの生成文法の見方を再考した。具体的な提案としてはAoyagi (1998)に従い、「と」は統語的にどのレヴェルにも付加できる接辞であると提案した。さらに、形態的に「と」は埋め込み文の文末に現れるため、例えば、VPのレヴェルで付加すると正しい語順が派生できない。よって、「と」は文末まで移動するという提案をした。このような接辞移動は一見するとアドホックのように思われるが、先行研究においてしばしば、接辞が移動することは提案されている。よって、このような統語的移動が日本語における接辞の一般的な特性であることを考えると決してアドホックではないと考えられる。 以上のような研究は、申請した研究テーマの28年度に沿うものであり、「と」の分布を再考することにより、なぜ他の補文標識であるとされている「の」や「か」と共起できるのかを説明する。即ち、「と」は補文標識ではなく、分布が比較的自由な接辞であるため、「の」及び「か」という形態素をホストする統語レヴェルに付加できるからである。 さて、「の」の研究であるが、こちらに関しても補文標識ではないという立場をとった。よって、これまでの先行研究は意見を異にする。具体的には「の」は形式名詞であり、AspPのような相解釈に関わるレヴェルか、TPのような時制解釈に関わるレヴェルの統語的範疇を選択すると提案した。 以上の研究は28年度の「補文標識の再帰構造」に関わるものであり、概ね研究目標を達成することができた。この成果を学会などで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第一義は、これまで特に議論されてこなかった日本語の補文標識の構造を統語論及び形式意味論の見地から再考し、その結果を考察することにある。特に日本語学の研究で得られたデータを、生成文法の枠組みで分析するということは引用構文の研究でこれまでなかったことである。その成果をいくつかの学会で発表できたので、これまでのところ概ね順調に進んでいる。しかし、本研究を米国コネチカット大学言語学科に提出する博士論文として執筆しているので、予定していたジャーナルへの投稿ができなかった。研究は進んだが、その成果を学会のプロシーディングス以外論文として発信できなかったので、今後の課題としたい。また28年度は複合動詞の研究をあまり行わず、代わりに形式意味論の枠組みの研究に重点を置き、「と」の意味論的分析を詳細に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度のうちに博士論文を完成させる予定である。また並行して国際ジャーナルへも論文を投稿していきたい。また28年度は複合動詞の研究をあまり行わなかったので、こちらの方も研究を進めていきたい。その他の研究の大まかな内容は完成しているので、29年度はその結果をさらに考察し、どのような理論的影響があるかを考えていく。具体的には「と」を使った埋め込み文で、コントール構文と長距離A移動とされる目的語繰り上げ、主語繰り上げ構文を考察し、国際ジャーナルや学会に投稿していく予定である。また29年度の5月27日にWAFL13で発表する主格・属格交替現象をさらに考察し、論文としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた図書を購入せず、同内容が掲載されている電子ジャーナルや図書館からの本の借り出しで研究を進めたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度の図書・物品購入に充てる予定である。
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[Book] The Verbal Domain2017
Author(s)
Roberta D'Alessandro, Irene Franco, Angel J. Gallego, Alec Marantz, Susi Wurmbrand, Koji Shimamura, Jim Wood, Elena Anagnostopoulou, Heidi Harley, Maria Polinsky, Nina Radkevich, Marina Chumakina, Florian Schafer, Artemis Alexiadou, Terje Lohndal, Phoevos Panagiotidis, Vassilios Spyropoulos, Anthi Revithiadou 他
Total Pages
352 (179-204)
Publisher
Oxford University Press