2017 Fiscal Year Research-status Report
「認識された事態」にもとづく知識・証拠性・認識の言語表現の分析
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16K16827
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
田村 早苗 北星学園大学, 文学部, 講師 (90728346)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トイウ / コト節 / 推論 / 理由・目的節 / 終助詞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,「認識された事態」という意味レベルが言語分析,特に日本語の知識・推論に関わる表現の分析にとって重要な役割を持つと示すことである。「認識された事態」とは単なる事態・出来事そのものではなく,ある主体によって認識されたものとしての事態・出来事と述べることができる。 この研究課題のもとで,本年度は主に,①理由・目的を表す従属節の研究,②推論を述べる表現におけるコト内容節の分布および意味論の研究,③終助詞の機能分析と談話における情報管理モデルの研究の3点に取り組んだ。①の理由・目的を表す従属節については,理由・目的を表す従属節が事態を認識する視点を含むような従属節(Epistemic Phrase)であり,認識視点が意味論的な変数としてこのレベルの節に含まれるという想定と,主題助詞・とりたて助詞の付加が意味論的に量化表現として働くという補助的想定を組み合わせることで,主題・とりたて助詞が付加された場合の従属節の機能が意味-統語論的に説明できると論じた。②の推論構文とコト節の関係については,先行研究を検討し,コトおよびトイウの分析が推論構文に適応できないという分析をおこなった。③の終助詞の研究では,共通日本語の終助詞の先行研究と比較しつつ北海道方言の終助詞サの分析を行い,話し手がどのように他者の知識をモデル化し発話によって操作するかを探った。 いずれの研究も,知識のモデル化や様々な視点からの知識という意味統語レベルの存在を探るものであり,本研究課題にとって興味深い分析を提示することができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の進捗状況は,概ね順調であった。特に前年度の課題であった研究成果の公開について活発に進めることができた。結果,国内学会(日本言語学会大会)・国際学会(Japanese Korean Linguistics)において研究発表を行い,英語論文も含めて2本の論文に成果をまとめることができた。研究活動としては,2つの叙述タイプと統語構造(Kuroda, 上山)に基づく副詞節の分析案や,終助詞の機能分析に関して研究会で発表し,関連分野の研究者と意見交換を行うことができた。特に現象の記述面はかなりの進展を見,課題最終年度の理論的分析および現象横断的な要因の解明に向けて十分な基礎を作ることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は本課題の最終年度であるため,①これまで扱ってきた諸現象の分析をまとめあげる理論の構築,および②成果の発表 を中心に据えて研究を推進する。平成29年に引き続き,国際学会と国内学会の両方で研究成果を発表することを目指して,日本言語学会,日本語文法学会,Japanese/Korean Linguistics, Workshop on Altaic Formal Linguistics などに応募する。また,査読付き学会誌への投稿を行う。また,H29年度に実施しなかった琉球語のモーダル表現に関するデータ収集・分析も行う。 ①の全体的な理論については,話題が広く学会発表や論文誌投稿には適さないと考えられるが,報告書の1~2章分として原稿を作成し,他の成果論文と合わせて報告書にまとめることを予定している。
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Research Products
(6 results)