2017 Fiscal Year Research-status Report
日韓両言語における中断節の語用論的機能に関する対照研究
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16K16830
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
金 ジョンミン 麗澤大学, 外国語学部, 准教授 (30510044)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中断節 / (間)主観性 / 談話機能 / 日本語教育 / 韓国の日本語教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日韓両言語の中断節の談話・語用論的機能を明確にすることを目的とするものである。本年度は韓国語の「ko」と日本語の「し」中断節の談話機能の解明を目指して、まず、分析の土台となる日韓のリメイクドラマ(日本語原作の『家政婦のミタ』『ドラゴン桜』『派遣の品格』とその韓国リメイク版のそれぞれ1話~5話まで)の台詞を書き起こし、データベース化した。その後、両形式の生起頻度を調査し、談話機能について文法化における(間)主観性の観点から理論的考察を行った。その結果、両形式ともに(間)主観性を体現する点で共通性が見られるが、韓国語の「ko」のほうが先行文脈への依存性が「し」よりも高いことを明らかにし、その研究成果をThe 8th International Contrastive Linguistics Conference(ICLC8、於ギリシャアテネ大学)において口頭発表を行った。 また、日本語の中断節が、韓国の日本語教育分野においてどのように教えられているのか、その現れ方を調査した。具体的には韓国で市販・製作された日本語教科書16冊を分析対象に、「が」「けど」「から」「ので」「し」「たら」「ば」「と」「のに」が「文中(従属節内)」に生起した場合と「文末(中断節)」において出現した場合に分けて、それぞれの導入順序(導入課)と出現回数を調べた。その結果、全体的な傾向として「文末(中断節)」よりも、「文中(従属節内)」の導入順序が早く、取り上げられている例文数も多かった。また、「から」中断節の導入順番が最も早いのに対して、日本語母語話者の話し言葉において最も使用頻度が高いと言われている「けど」の導入が遅いため、今後、すくなくとも「けど」に関しては導入順番の再考と見直しが必要であるという日本語教育現場への示唆をまとめ、『言語と文明』に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、リメイクドラマにおける同場面と登場人物に着眼して、登場人物間の中断節の使用場面と頻度に関する日韓対比を行う計画であった。しかし同場面を抽出する作業が非効率的であり、かつ、有意義な結果が得られそうにないと判断し、日本語の吹き替えの台詞の収集および書き起こし作業へ方向転換したため、やや遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語の「けど」とそれに対応する韓国語の「nuntey」について、これまで収集して書き起こし作業が終わっている日韓リメイクドラマに加えて、韓国語から日本語への対訳集と、日本語の吹き替えの台詞を書き起こして、データベース化の作業を行う。その後両形式の対応関係に関する頻度調査及び両形式と共起する前接語の形態・統語的特徴について考察を行い、両言語間における類似点と相違点を明らかにする。その成果をJapanese/Korean Linguistics(アメリカ)へ口頭発表の申請をする計画である。もし当該学会に不採択の場合は、日本社会言語科学会、または韓国日本語学会での発表を目指す。
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Causes of Carryover |
学会発表旅費(アメリカまたは、韓国)及び現地調査(韓国)への出張旅費に使用するため残額を繰り越すことにした。また、本年度も引き続き、韓国語と日本語のデータ入力は在学生の協力を得て(謝金支給)補充する予定である。その他、国際学会誌への論文投稿時にかかる査読料と掲載費として使用予定である。
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