2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16831
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐野 真一郎 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (30609615)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | OCP / ライマンの法則 / 連濁 / 日本語話し言葉コーパス / variation / interaction / internal factor / external factor |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,言語の様々な側面において「同じであること」を禁止する必異原理をテーマとして,その効果と複数の一致現象(違反)が起こった場合の相互作用を実際の言語使用データを使い調査を進めている。そのことにより,必異原理がどのような役割を持つかということに加えて,その違反が実際の言語表現でどのように回避されるかを明らかにすることを目的として計画を実施している。 先行研究,及び申請者のこれまでの研究成果を踏まえ,本研究ではコーパスを使って大量の発話データを調べることで,濁音の一致と子音・母音の一致の相互作用と,必異原理の効果を詳細に調べている。具体的な調査項目は以下の通りである,①促進・抑制効果,②禁止・抑制効果,周囲の環境,③一致回避方法のパターン,④文脈的要因(隣接性,数,単語境界,一致の度合い,品詞・語種など)。 本年度(平成28年度)は,「連濁」(ほし+そら => ほしぞら)を対象として研究計画を実施した。具体的には,本現象の適用が子音・母音の一致を避け得る,濁音の一致を生み出し得ることに注目し,上掲の調査項目に従い必異原理との関連性を詳細に調べた。 「日本語話し言葉コーパス」を用い,収録されている自然発話データの中から,研究対象となる複合語を抽出し,無声阻害音が無声音のまま発話されているか,あるいは有声音として発話されているかを調べ,更にその際の条件を数量的に明らかにした。 結果として,必異原理は,①子音・母音の一致を避ける場合は連濁が促進され,濁音の一致を生み出す場合は連濁が抑制されることが確認された,②禁止する場合もあれば(強い効果),抑制する場合もある(弱い効果)ことが確認された,③様々な違反回避・修復を引き起こすが,そのパターンが確認された,④文脈的要因の影響を受け,近い,多い,一致度が高いほど影響力が強くなるが,単語境界によって無効化されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画で想定していた調査項目に加えて,それ以外に関しても知見を得ることができた。更に,確認された必異原理の相互作用の一部を,理論的な分析へと発展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度(平成29年度)は,「借用語有声促音の無声化」に注目し,調査を進展させる予定である。「連濁」の研究において得られた結果と比較することで,必異原理と相互作用の更なる理解を目指す。調査項目は本年度に倣う。 また,方法論として本年度実施した研究成果で得られた知見を活かし,効率化を図る。
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