2017 Fiscal Year Research-status Report
中国北方のツングース系危機言語ホジェン語の文法記述とドキュメンテーション
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16K16833
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
李 林静 成蹊大学, 法学部, 教授 (40567418)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 危機言語 / ドキュメンテーション / ホジェン語 / ツングース諸語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の具体的な目的は、1)これまでに出版された危機言語であるホジェン語のテキスト及び研究代表者のフィールド調査によって得られた音声・映像資料をもとにホジェン語の形態・統語構造をより詳細に記述すること、2)ホジェン語のドキュメンテーションを行い、得られた音声・映像資料を文字化し、文法情報を付して成果刊行し、今後の歴史言語学的研究のデータとして利用可能なかたちにととのえることである。 具体的には、(1)2017年7月に、過去に収集したホジェン語の音声・映像資料を文字化し、形態素分析を行ったうえ、文法情報、日本語訳、中国語訳が付与されたホジェン語のテキストを公表した。 (2)2017年8月-9月に、ホジェン語話者の居住地である中国黒龍江省双鴨山市饒河県、同江市街津口郷においてフィールド調査を実施した。街津口郷では、話者A氏(72歳)と話者B氏(81歳)によるホジェン語の会話の音声・映像データを収集することができた。街津口郷在住の話者A氏を350キロ離れた饒河県まで連れていき、饒河県在住の話者C氏(80歳)と面会し、両氏による会話の音声・映像データを収集することができた。ホジェン語を流暢に話せる最後の3人(報告者の調査による)に調査を行うことができた。 (3)2017年11月に、国際シンポジウムにて、黒龍江省におけるホジェン語の使用実態及び保存状況について研究発表を行った。 (4)2018年3月に、2015年8月に収集したホジェン語による会話の音声データを文字化し、形態素分析を行ったうえ、文法情報、日本語訳、中国語訳が付与されたホジェン語のテキストを公表した。 注:ホジェン語はヘジェン語とも言う。2017年7月に公表した業績より、本言語の英語表記Hezhenに合わせ、ヘジェン語と呼ぶことにした。ただし、本実績報告書においては研究題目に合わせてホジェン語のままとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去にフィールド調査において得られた音声・映像資料を聞き起こし、形態素分析を行ったうえ、その一部を研究成果として公表した。また、ここまで試みなかった社会言語学観点からのアプローチも行い、国際シンポジウムで口頭発表を行った。これらの成果発表の際に得られた気付きを活かし、次年度のフィールド調査に向けて、聞き起こし、形態素分析作業を継続しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
ホジェン語を流暢に話せる話者が3人(報告者の調査による)となった今の急務は当該言語の音声・映像資料をできるだけ多く収集し、ドキュメンテーションを進めていくことである。2018年度も引き続きフィールド調査を実施し、新たな音声・映像資料を収集し、また過去に採録された音声・映像資料の聞き起こし、形態素分析作業を急ぎたいと考えている。
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Causes of Carryover |
理由:当初は3年目に成果のまとめに重点を置く予定だったが、ホジェン語の話者が極めて少なくなった現状を考えると、なるべく話者が存命のうちに、フィールド調査を継続することが望ましいと判断し、それに必要な旅費を確保するために、次年度使用額が生じた。 使用計画:中国黒龍江省におけるフィールド調査の旅費に当てたい。
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