2018 Fiscal Year Research-status Report
単純併合に基づく最適な統語構造派生:その理論的・実証的研究
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16K16835
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
水口 学 東洋大学, 社会学部, 教授 (90555624)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 対併合 / ラベル付け / 節構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度(2017年度)に引き続き、2018年度の研究においても本研究課題のキーワードである「併合」演算を中心として、派生のメカニズムについて研究を進めた。併合には置換構造と付加構造を作り出すものが理論的に予測され、経験的に裏付けられるが、本年度の研究においても付加構造を作り出す対併合を軸に、節の大きさの観点から派生メカニズムの研究を行った。今年度の研究では、昨年度までの研究から考察してきた節構造と主語の抜き出しの問題を掘り下げ、節の大きさが主語の抜き出しに影響を与える事実に対して対併合を仮定することで説明が与えられることを明らかにした。同時に、主語の抜き出しに関する言語内・言語間変異の問題に取り組み、併合の枠組みの中でそれがどのように導かれるのかを明らかにした。また、この研究成果が、日本語に見られる節内かき混ぜに対して解決策となることやA'移動における空移動仮説に対して新たな分析を示すことを明らかにした。
対併合に依拠する節構造の研究には、ラベル付けが大きく係わっている。本年度の研究では、弱いラベルになるとされる主要部が対併合によってラベル付けを行える主要部になることを明らかにし、この成果が理論の単純化に貢献することを示した。また本年度の研究において、A/A’の区別をどのように捉えていくのか、またその区別を取り払うことができるか否かについての研究を行った。後者に関しては昨年度の最終盤において取り組んだが、時間が限られたため、次年度(2019年度)においても経験データを拡大し、この研究に引き続き取り組む予定である。
本年度の研究から得られた成果は、派生計算における併合の役割を裏付けるものであり、言語能力が併合を中心として「強い極小主義の仮説」に基づいて機能し、インタフェイス(中でもラベル付け)との相互作用の結果、言語現象を生み出していることを示すものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、今年度の研究で島の制約の問題を極小主義の枠組みの中で取り上げる予定であった。しかし、今年度の研究において、前年度までの研究を掘り下げたり、研究に取り組む中で新たに生じた課題に取り組む部分があった。こうした研究は、島の制約の問題に直接的に係わっているわけではないが、今年度行った自由併合の中における言語間変異の研究と密接に係わるものであり、示唆を与えるものである。このようなことから、全体としてみた場合、研究課題から大きく逸れるようなものではなく、研究計画(大枠)にほぼ沿った形で順調に研究が進んでいると考えられる。このことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請当初の研究計画に従って、今後も研究を進めていくことを基本にするが、研究を進めていく中で新たに見つかった課題や本年度やり残し、十分な成果を得られていないものもある。こうしたテーマについては、本研究課題全体の推進に当たり重要なものになるので、次年度の研究の中で当初計画と共に研究を継続し、次年度以降の研究に繋げていくつもりである。
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Causes of Carryover |
当初の予定より、旅費が安価となった。次年度に配分される金額と合わせて、残りの金額は主に旅費として使用する。
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