2017 Fiscal Year Research-status Report
聴知覚特性を考慮した日本語学習者の促音挿入およびバイアスの原因究明
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16K16837
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鮮于 媚 日本大学, 文理学部, 助教 (60734738)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 促音の知覚 / 促音挿入 / 韓国語の濃音 / 日本語学習者 / 知覚範疇化 / 長短音素 / フォルマント / 先行母音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本語を学習時に習得が難しいとされる促音を中心とした研究である。中でも、促音のないところに促音を入れてしまう「促音挿入」、促音が入ってないところに促音があると聞いてしまう「促音への知覚バイアス」の原因を究明することが目的である。日本語と韓国語の子音の類似性から、主に、知覚上で見られる「促音への知覚バイアス」の原因を究明するための、仮説を設定、聴覚実験を実施した。仮説1)韓国語母語話者は語中の無声阻害音促音とその非促音を韓国語の濃音と平音に同化させて知覚している。仮説2)促音と非促音および語中の濃音と平音の知覚手がかりは子音部の時間長であり、濃音と平音の知覚境界値は、促音と非促音の境界値より時間長が短い方にシフトしている。学習者は韓国語の濃音を日本語の促音と代用して知覚しているかを検証した。実験の結果、次のことがわかった。第一に、韓国語の語中の濃音と平音の知覚判断基準は時間長であり、促音と非促音の知覚境界値より短い方にシフトしている。第二に、学習者の促音知覚境界値は日本語母語話者より短い方にシフトしている。第三に、学習者の濃音の知覚境界値と促音の知覚境界値は異なる。この結果から、学習者が知覚している促音は、濃音よりも短い時間長であるため、促音への知覚バイアスが生じると思われる。 次に、促音挿入音声についても調査を実施した。調査は、韓国語母語話者が生成した音声の中に、促音挿入と判断された音声を対象とし、音響分析を実施した。音響分析の変数は、時間長、そして、先行母音のフォルマントであった。結果は、第二フォルマントの動きが母語話者と異なり、そのフォルマントの差が促音挿入に関連している可能性が示唆された。学習者は生成時に舌を奥の方に狭めを作るため、その次の子音を生成するまで、時間がかかり、その結果、子音部の時間長が長くなる可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、生成および知覚のデータが収集できた。収集したデータは分析を行い、その結果を学会および発表会で、報告することができた。なお、母語話者の評価および音響分析も順調に進んでいるため、これらの結果は、来年度以降、結果を報告できると思われる。今回のデータの結果をまとめ、論文としても投稿する準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、データの分析を進めると共に、中国語母語話者に対する知覚範疇化実験を行う予定である。中国語母語話者とのデータを比較することで、日本語特有の問題であるのか、韓国語母語話者に生じる問題なのかを明らかにすることができる。さらに、生成調査については、促音挿入音声とそうではない音声を比較することで、促音挿入判断の実態を明らかにすることができる。そして、母語話者の評価を増やすことで、より客観的なデータを確保することを目指す。さらに、韓国語母語話者の促音挿入音声は、口腔内の舌の動きが母語話者と異なることが一つの原因であることが示唆された。今後、口腔内の舌の動きを観察できるような調査を加え、促音挿入音声の生成の過程を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成29年度の学会発表は国内のみとなっていたので、旅費は予定より少ない支出となった。データもすでに収集済みのものを分析したいたため、人件費の支払いは予定より少ない結果となった。来年度は、国際会議も予定しているため、来年度以降に支出をする予定である。
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Research Products
(3 results)