2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16840
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
川瀬 卓 弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (80634724)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歴史語用論 / 配慮表現 / 行為指示 / 副詞 / 前置き表現 / 定型化 / 不定語 / 近代語の分析的傾向 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、副詞と前置き表現に注目して配慮表現の歴史的変遷を明らかにすることを目指すものである。2017年度における研究業績は、以下のとおりである。
①発表「仮定、可能性想定を表す副詞の史的展開―近代語の分析的傾向の一例―」近代語学会研究発表会、白百合女子大学、2017年12月9日。②論文「副詞「どうやら」の史的変遷」『語文研究』第124号、九州大学国語国文学会、2017年12月。
①は仮定、可能性想定を表す副詞の史的展開について考察し、もともと同一の副詞が表していた仮定と可能性想定の意味が、異なる副詞によって表し分けられるようになる過程について明らかにしたものである。本発表によって示された近代語の分析的傾向は、本研究課題にも関わる重要な現象である。②は不定語と助詞によって構成される副詞の一つである「どうやら」について、その周辺も考慮して歴史的変遷を明らかにしたものである。「どうやら」そのものは配慮表現に直接関係するものではないが、行為指示における配慮を表す副詞「どうぞ」や「どうか」の歴史的変遷と関わる。また、これらの副詞が、係助詞に由来する不定の助詞「やら」「ぞ」「か」の歴史的推移とも関連することを示し、今後の研究の広がりの見通しを得ることもできた。 なお、論文集に寄稿した論文(「前置き表現から見た行為指示における配慮の歴史」「不定の「やら」「ぞ」「か」の東西差と歴史的推移」の2本)が、今年度中に刊行される予定だったが、諸般の事情により時期がずれこんでおり、2018年度の刊行となる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
配慮表現に関わる副詞そのものについては、今年度の研究成果として公にできていないが、研究の進展とともに見えてきた重要な関連現象については研究成果が発表できた。配慮表現に関わる副詞についても、用例の収集と分析を進めているところである。また、校正済みで次年度中に刊行される予定の論文が2本ある。以上を総合的に見れば、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
行為指示表現とともに用いられる副詞や感謝表現で用いられる副詞について、引き続き研究を進める。東西の地域差や文体的特徴に注意を払いつつ、各副詞の語史を明らかにするとともに、それらの歴史が日本語史の流れにおいてどのように位置付けられるかを追求していく。 また、本科研の最終年度にあたる2018年度は、これまでの研究成果を積極的に公表していきたい。
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