2017 Fiscal Year Research-status Report
宮古語諸方言の言語記録のための基礎的研究とデータ収集
Project/Area Number |
16K16842
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
林 由華 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特別研究員(PD) (90744483)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 琉球諸語 / ドキュメンテーション / 方言差 / 消滅危機言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、消滅の危機にある南琉球宮古語について、豊かな方言バリエーション全体を記録保存するためのデータ収集、および記録のための社会言語学的基盤、電子公開の基盤の整備である。宮古語の方言は数十あるとも考えられるが、実際に話者が区別しうる方言数はどのくらいあるのか、それがどのような区分を成しているのかについては、明らかでない。本研究は、そのような話者の言語意識に基づく方言区分・方言数を明らかにしてその記録の単位を割り出すとともに、それぞれの方言についての動画による談話資料を収集し、共有のために電子公開を行う。 本年度は、談話の収集と言語意識に基づく方言区画のほか、本研究の計画の一部である地元の高校生(宮古総合実業高校)と協同でのデータ収集および公開用コンテンツの作成、公開を進めた。試作済みのウェブサイト(「みゃーくの方言 ―宮古語諸方言の記録―」http://miyakogo.ryukyu)について、作成依頼先の coban.lab 上田寛人氏との相談のうえ、より多方言記録に適した構造に改良し、またデータアップロード時のユーザビリティも向上させ、高校生が自身でデータのアップロードやページ作成ができるようにした。これにより、本ウェブサイトにあげられたデータの一地域(来間)を高校生が担当する形になっている。これらの活動や方言記録のためのウェブサイトのデザインについて、次年度国際学会で発表を行う予定である。談話データは、新たに2地域、既にデータがある2地域での収集を行い、目標の新規4地点には及ばなかったが、これまで代表者が収集した談話データも含め、旧市町村すべてを網羅するデータが揃った。方言区画調査についても、対面調査での方式を継続したため目標の全地点での調査は行えていないが、主として中心部平良地域での調査を進め、平良地域内ではほぼ言語意識としての方言差がないことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究実施計画では、A.宮古語諸方言の談話収集4件、B.話者コミュニティの意識としての方言の数および区分を抽出するための調査を全域で実施、C.ウェブページでのデータ試公開を計画していた。本年度は高校生との協同作業によるAおよびCの作業が予定以上に進展したが、Aについては、収集は4件だがこのうち既に収集した地域のものが2件、新規のものが2件にとどまり、新規4件の目標には至らなかった。またBについては、昨年度末に計画した大量一括調査かのうな郵送アンケート方式による問題点がわかり、実際に行ったのは対面式調査のみで、目標の全域での調査には至らなかった。全体の計画目標を変更するほどの遅れではないが、これらにより、「やや遅れている」の評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度では、A.新規談話資料4件の収集、B.言語意識による方言区画調査の全域での実施とその結果についての学会発表、C.今年度までに収集したすべてのデータの公開 を目標とする。特にBについては、現在の対面式調査では調査可能地域数に限界があるため、対策が必要である。郵送によるアンケート調査を計画していたが、地元の協力者より、相手先がその地域の典型的な話者である保証がとれない、回答・返送を義務付けるのが難しいなどの指摘があった。また、対面調査をする中で、かなり若年の話者である場合、老年層と同じような方言差を知覚していない場合があることもわかった。これらの解決のため、電話を用いた調査に切り替えることを計画している。直接対面するよりは効率的であるうえ、郵送アンケート調査に比べ、地域の典型的話者であることが紹介や対話により確認でき、調査の信頼性が高い。次年度は、この方式で、未調査地域全域における調査実施を行う。
|
Causes of Carryover |
(理由) 予算配分の調整などにより生じた。 (使用計画) ウェブサイトをよりよくするための謝金に追加する。
|
Research Products
(2 results)