2018 Fiscal Year Research-status Report
ダイクシスに関する言語学的研究―対照研究、歴史研究、方言研究の観点から―
Project/Area Number |
16K16845
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
澤田 淳 青山学院大学, 文学部, 准教授 (80589804)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ダイクシス / 視点 / 歴史研究 / 対照研究 / 方言研究 / 語用論 / 文学語用論 / 文法と語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績の概要は次の通りである。 1.直示移動動詞「行く/来る」の選択原理について考察を行った。「行く」と「来る」の選択には、それぞれ、話し手の視点が到達点に置かれているか、到達点以外に置かれているかといった視点の違いが反映されているが、話し手はそのような視点の選択を、種々の語用論的要因(語用論的状況)を考慮に入れることによって決定していることが明らかとなった。また、「話し手と他者が共に移動主体となる」ケースに関して、日本語、英語、韓国語との対照研究も行った(「日本語の直示移動動詞の選択原理について―「行く/来る」の選択はどのようにして決まるのか?―」(『言語文化研究 久保進教授記念号』38(1/2): 237-290. 松山大学総合研究所)。 2.直示授与動詞「やる/くれる」の歴史について、方言を視野に入れつつ、(i)古典語における非敬語形の授与動詞の使用実態、(ii)「やる」の授与用法の発達・確立の時期、(iii)「くれる」の求心化(視点制約の成立)の背景・要因に焦点を当てた考察を行った(日本中部言語学会第64回定例研究会(2018年11月16日)において「日本語の授与動詞「やる/くれる」の歴史―視点制約の問題を中心にして-」と題して発表)。次年度、論文化する予定である。 3.その他、視点、省略、指示追跡、名詞句の指示、モダリティ、ミラティヴィティなど、ダイクシスとも関連の深い現象について考察を行った。 4.「文法研究と語用論」や「文学語用論」についても考察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイクシスに関連する現象も見ることで、ダイクシス自体の性質についてもより明瞭になってきた。また、今年度は、「語用論と文法研究」や「文学語用論」に関する考察も進めることができた。後者のテーマの実践の1つとして、川端康成の「伊豆の踊子」を対象に省略現象と視点・指示追跡との関係について考察を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度、直示授与動詞「やる/くれる」の歴史、直示的アスペクト、人称・社会ダイクシスなどのテーマを論文化すると共に、前年度・本年度から進めている研究テーマ(名詞句の属性と推論、文学作品における省略現象、等)についてもさらに考察を深めていきたい。
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