2016 Fiscal Year Research-status Report
英語史における名詞句内修飾要素の発達に関する実証的・理論的研究
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16K16852
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
茨木 正志郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30647045)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 名詞修飾形容詞 / 名詞句 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、古英語の名詞修飾形容詞、特に名詞後位の形容詞の統語と意味の関係を考慮し、その歴史的変遷に明らかにすることを試みた。 名詞後位形容詞の解釈は、Mitchell (1985)が述べるように、曖昧で明らかではない。先行研究でも意見が分かれており、Fischer (2000, 2001)は、統語に関係なく強屈折であれば叙述の解釈を、弱屈折であれば限定の解釈を持つと主張している。一方、Haumann (2010)は、屈折に関係なく、前位修飾であれば限定、後位修飾であれば叙述であると主張している。 本研究では、史的コーパスYCOEを用いて、名詞前位と後位に現れる形容詞のデータを収集した。さらに、影山(2009)の限定と叙述の解釈の定義を採用して、得られデータの分析を行った結果、先行研究の主張はいずれも理論的・経験的問題があることを明らかにした。具体的には、先行研究によれば、限定の解釈を持つ形容詞は名詞後位に現れないということを予測するのだが、様々な種類の限定解釈の形容詞が名詞後位に現れることを発見した。 さらに、Larson (1998)での等距離の概念を踏まえ、Cinque (2010)の分離DP構造とDikken (2006)のRelator Phrase構造を採用して説明を試みた。しかしながら、得られたデータを適切に説明できる構造分析を提案するまでには至らなかった。しかし、新たな言語事実の発掘という貢献を行うことができた。これらの成果は、第3回史的英語学研究会で口頭発表を行った。今後は、得られたデータから浮かび上がる事実に対する統語構造の妥当性を引き続き検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
形容詞のデータを収集し分析を行った。今後はその他名詞句内修飾要素との分布の相関関係をもとに、構造分析の精緻化を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果を学会で口頭発表を行い、参加者や研究協力者から助言を頂きながら進めていく。ある程度成果がまとめられたら、論文投稿し社会に発信していく。
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Causes of Carryover |
当初は、海外の研究会への参加を計画していたが、他の業務のためスケジュール調整ができず、参加することができなかった。また、論文の英文校閲をする予定だったが、上記と同様の理由のため、執筆する時間が取れず校閲にかけることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
業務を工夫してこなすようにし、出張や論文執筆の時間を確保できるよう努め、旅費及び校閲費として使用する。
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