2016 Fiscal Year Research-status Report
日英語完了・結果指向構文にみるモダリティとアスペクトの相関性
Project/Area Number |
16K16855
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
田村 敏広 静岡大学, 情報学部, 准教授 (90547001)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Get受動文 / 責任性 / 事態の不可変性 / 話者の感情表出 / 感情の慣習性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、構文に観察されるモダリティ(発話時点における話者の感情表出)とその構文のアスペクトの関係に着目し、両者の相関性を解明する試みである。分析対象とする具体的な構文は、英語のGet受動文と日本語の「てしまう(ちゃう)」形式である。両構文ともに、話者の後悔や非難、予想外の驚きなどのモダリティを表出する談話上の機能を備えている点において類似している。 平成28年度は、特にGet受動文におけるモダリティ表出と構文のもつ意味性質がどのように関わっているのかを分析した。Get受動文の主語には、記述される事態に対して責任を有するという「責任性」の概念が関わる。この意味性質がモダリティ表出の重要な基盤となっているとの仮説のもとに、具体的な発生のメカニズムを検討した。まず、Fiehler(2002)に従い、人間の感情は慣習的であり、どのような感情を抱くのかは社会的・文化的に予測が可能であるという「感情の慣習性」という観点から考察を行った。例えば、「後悔」のような感情は、人が取り返しのつかない損失を出したような場合に生じるという。つまり、後悔という感情は発生する状況がある程度予測可能であることを意味する。したがって、聞き手がGet受動文が、話者にとって取り返しのつかない損失を発生させた事態を表している(事態の不可変性)と解釈することで、その構文に話者の後悔の念を読み取るのだと考えられる。特にこのGet受動文の主語には「責任性」が関わるため、主語自ら事態の発生をある程度コントロールすることが可能だったことが示唆される。そのために、この構文では話者の感情表出が発生しやすいのではないかと結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で設定した3つの研究ステージのうち、研究ステージ1(想定されるモダリティ表出メカニズムの妥当性)については、予定どおり進めることができた。また、研究ステージ2(想定されるモダリティ表出メカニズムの妥当性)についても平成29年度初頭より取り組みが可能であり、おおむね順調だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、研究ステージ2(想定されるモダリティ表出メカニズムの妥当性)として感動詞「しまった」に着目する予定である。この「しまった」と「てしまう」形式の通時的関連性を分析し、アスペクト性がモダリティ形式へと言語変化する可能性を考察し、その妥当性を検証する。 この研究で得られた知見を国内あるいは国外の学会にて積極的に発表し、論文にまとめ公表する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた謝金の金額が、先方の都合上、予定時間より短くなったため、それに伴い未使用分が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の計画でもデータベース作成等に関する知識の提供として謝金が必要となるため、そちらにて使用する予定である。
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