2017 Fiscal Year Research-status Report
日英語の中核的現象と周辺的現象が示す相関に関する意味・語用論的研究
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16K16857
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
大澤 舞 東邦大学, 薬学部, 准教授 (70610830)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 周辺的現象 / 中核的現象 / 重複可能表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、日英語の中核的現象と周辺的現象の相関に関する一般化を提案し、その理論的な意味合いを探ることである。段階的な研究を期間内に行うこととしている。当初計画では、平成29年度では、日英語の類似構文の比較対照研究を行うこととし、最終年度において、周辺的現象を分類し、中核的現象と周辺的現象の相関に関する一般化を提案することとしていた。 平成29年度は、中核的現象と周辺的現象の相関に関する仮説を提案した。周辺的現象には次のような2つのタイプが認められる。(i)ある構文が満たすべき規則を、構文の構成要素では満たせない場合に、文脈等構文外の要因によって当該の規則が満たされるもの。(ii)構成要素の組み合わせが規範から逸脱したまま、構文全体が対応する中核的構文とは異なる独自の機能を有するもの。つまり、周辺的現象には中核的現象にはみられない特性があるが、その特性が、中核的現象に類似するためのものか、独自の意義をもつためのものかによって、2つのタイプに分類できるのである。(i)は中核的現象に近づくことで認可される周辺的現象であり、(ii)は中核的現象から離れることで認可される周辺現象である。 仮説の提案は最終年度に行う予定であったが、平成28年度までに行った記述研究からこのような仮説を提案する妥当性が認められたため、平成29年度に論文としてまとめ、発表した。既存の視座から分析されてきた中核的現象を、改めて周辺的現象を通して再考察することが可能であることを示唆する結果であるという点で意義をもつものである。 また、本研究とは別に、国立国語研究所共同研究プロジェクト「対照言語学の観点から見た日本語の音声と文法(リーダー:窪薗晴夫)」の共同研究員として、日本語のとりたて表現と英語の副詞の比較対照研究を行い、その結果を日本英語学会第35回大会において口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中核的現象と周辺的現象の相関に関する仮説に関する論文が、平成29年11月刊行の論文集の一章として掲載され、今年度の成果を発表することができた。 また、記述的研究を行う研究者と理論的研究を行う研究者とで、周辺的現象を記述的・理論的の両側面から分析することを目的としたパネルセッションを企画し、日本語文法学会第18回大会において、司会者・発表者として当該パネルセッションを実施することができた。 さらには、国立国語研究所プロジェクトの共同研究員として行った研究成果も日本英語学会第35回大会にて発表した。 以上が本年度の成果としてあげられるため、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初平成29年度に行うとしていた、周辺的現象と分類される日英語の類似構文に関する記述研究の成果をまとめて発表することができていない。そのため、すでに提案した仮説の妥当性を示すことを目的として、日英語の類似構文の比較対照研究を進めていく。データ収集は終えているため、その分類と分析を主に行う予定である。 また、国立国語研究所プロジェクトである日本語のとりたて表現と英語の対応表現との比較研究の成果から、特に英語の対応表現を周辺的現象として分類することができると考えられるため、プロジェクトの成果も本研究課題に取り込んで分析していく予定である。
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Remarks |
大澤 舞 日本語文法学会第18回大会パネルセッション『重複表現の形態・統語的分析と語用論的機能』企画・司会・発表
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Research Products
(6 results)