2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K16860
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
石澤 徹 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 講師 (00636095)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 語彙学習 / 音韻 / 学習者特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本語の語彙学習において学習者の特性がどのように関連しているか検証するものである。具体的には、TOPRAモデル(Barcroft, 2002)のフレームを用いて、学習時の処理資源の使われ方を踏まえて、音韻の認知能力の差が語彙学習の成否にどのような影響を持つか検討する。Skehan(1998)によると、音韻処理能力は言語能力が低い段階の語彙学習を予測するうえで重要と指摘されているが、日本語学習者の場合は、母語(漢字圏か非漢字圏か)の文字体系も影響する。そのため、漢字の学習が進んだ段階になると、音韻処理能力の違いだけで語彙学習を予測できるかどうか不明なところがある。よって、音韻に対する知識や認知能力を中心に、学習者特性がどのような影響を持つかを検討する。 当該年度は、本研究の基盤としているTOPRAモデルの提唱者であるJohn Barcroft氏からコメントをいただくことができた。その際、音韻体系の中でも、リズムやアクセントといった点についてはモデルの見直しを行う必要があることが分かった。なお、学習者の認知面に対して実験的手法を用いて検証することを考えていたが、それに加え、語彙学習方略の点から実際の学習者の様子を調査し、検証に加えることにした。 また、計画当初は、初級と上級での比較を考えていたが、日本語の書字表記の特徴である、仮名文字と漢字の違いをふまえた学習の違いを考えると、中級段階での縦断的な調査も必要だと考える。この点についても、十分に精査したうえで、2019年度には調査を行えるように準備を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年度、TOPRAモデル提唱者であるJohn Barcroft氏からコメントをいただくことができた。その際、リズム・アクセント体系という点がどのようにモデルの中に収まるのかについて、より綿密に理論的背景を確認する必要性に気づくことができた。よって、調査内容の見直しを行う必要性が出たため、実験実施には至らなかった。予定では、実験を行うことにしていたため、遅れている、と判断した。 また、適性処遇交互作用を考えると、学習者の学習スタイルと学習ストラテジーを調査に加えたいと考え、その準備を進めている。質問紙の整備はもう少し時間が要する状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
実際の学習者のつまずきや学習方略の分析のために、いわゆる量的な実験だけでなく、質的研究として、学習者の様子を観察したい。これをふまえて、当初行う予定だった実験的調査の方向性を定め、日本語能力の段階と学習者の特性をふまえた学習方法を実験的手法で導き出したい。くわえて、TOPRAモデルが日本語および日本語学習者に適合できるかについても検討を行う。
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Causes of Carryover |
実験を行うことができなかったことが大きい。その渡航費等の分が繰り越されている。 今年度実験を行うことで解消できる。
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