2020 Fiscal Year Research-status Report
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16K16860
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
石澤 徹 東京外国語大学, 大学院国際日本学研究院, 准教授 (00636095)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 語彙学習 / 学習者の特性 / 文字の認識 / 初中級レベル |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語学習において、中級から学習する語彙が膨大に増加するが、特に漢字を用いる語彙が増加する。しかし、その多くは学習者の自学自習に委ねられることも多い。また、日本語学習者の中でも、漢字を認識できても手で書いたことがないという学習者も増えており、いわゆる「書いて覚える」行動が減っている可能性も大いにありうる。そこで、デジタルネイティブ世代の学習者を対象に、漢字を書いた経験が少ない日本語学習者がどのように漢字の字形を覚えようとするかについて、実態を明らかにするべく、探索的に検討を行った。 日本語学習経験が浅い韓国語母語話者を対象に、漢字の字形認識に関して、オンラインで調査を実施した。協力者は韓国の大学で日本語を学ぶ学習者で、学習暦は3か月程度、ほとんどの学習者が手で漢字を書いたことがなかった。学術共通語彙で用いられる漢字の中から、画数が多いものを選び、「どこに注目すれば覚えやすいか」「どこが覚えにくいか」「どのように説明すれば、この漢字を知らない人が覚えやすくなるか」について母語で記述してもらった。 結果、「覚えるために注目する箇所」について、学習者が同じように着目するわけではないこと、同時に、学習者の中でも、いつも同じように注目しているわけでもなく、初級学習者の場合、ストラテジーとして安定しているとは言えないことが示された。ただし、韓国語母語話者という学習者の特性上、ハングルのようにパーツに分けて覚えようとする様子が見られた。また、学齢期に漢字の塾に通った者は、韓国漢字の覚え方を用いていた。今後は、実際に視点で注目しているところと説明とが一致していたかを検証するとともに、語彙としての記憶や表出の際はどうか、また、音韻との関係について明らかにすることが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響を受け、海外で調査協力者と対面で実施する予定であったデータ収集が不可能となったため。
ただし、当初の予定を変更し、今回できる形で文字の認識に関する調査を実施したことで、新たな視点が得られたことは大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、視線計測実験を実施することで、語彙学習において、学習者が何に注目するかを検討し、学習者の特性(母語、音韻認識能力、文字認識能力)とのかかわりを検証する。 コロナ禍の影響が続き、視線計測実験ができない場合は、対応策として、広くアンケート調査を行い、語彙学習に対して影響する学習者特性を探索的に検討することとしたい。
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Causes of Carryover |
学会発表の際の参加費に充てる予定である。
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