2021 Fiscal Year Research-status Report
ハワイ日本語テレビ放送の教育機能に関するメディア論的研究
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16K16865
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
白戸 智子 (松永智子) 東京経済大学, コミュニケーション学部, 准教授 (60735801)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 加藤秀俊 / 柳田國男 / メディア論 / 世相史 / パーソナルコミュニケーション / 交通 / ハワイ / 大河ドラマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の実績の一つとして、「名著」や「先達」の探求から「メディア」の定義を捉え直す研究発表を行なったことが挙げられる。具体的には2021年6月の日本マス・コミュニケーション学会春季大会ワークショップ(オンライン開催)における口頭発表「ヨコに生きる社会学者・加藤秀俊のメディア論」と、同年9月のメディア史研究会年次研究集会における口頭発表「メディア以前の事ー柳田國男『明治大正史世相篇』」(オンライン開催)であり、後者は2022年2月に同タイトルで論文として公刊(『メディア史研究』51号所収)された。 前者は、日本におけるコミュニケーション研究の先達である加藤秀俊(1930-)の来歴やネットワークから、彼の「メディア」観がいかに形成されてきたのかを分析(方法は文献調査とインタビュー)。アメリカ政府の人口調査研究としてインドに派遣されて実施したフィールドワークで、「人」という「メディア」の重要性を実感した加藤は、マス・コミ時代でもなお「情報社会」の骨組みであるパーソナルコミュニケーションへのまなざしを落とさなかった。その視点は、ハワイの日本語テレビをめぐるコミュニケーション調査に取り組む本研究にとって、大いに示唆に富む。複数回の現地調査を通して、放送が直接人々に与える影響よりも、寺院という「場所」やコミュニティをつなぐ「人」の「メディア」的特性へと関心を寄せていった私は、テレビや新聞、インターネットといった情報通信「メディア」論として研究をまとめる限界を感じていたからだ。加藤が私淑した柳田國男(1875-1962)の「世相史」分析も同様に、「世間話」の移り変わりや「交通」への着目など、収集したデータを考察するための枠組を刷新する好機となった。次年度発表予定の論考に活かしたい。 なお、「日系人」ドラマ論が福間良明編『昭和50年代論』(みずき書林、2022年)所収論文として刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
出産・育児という個人的な事情とコロナ禍という社会的事情によって、渡航を伴うフィールドワークが困難であり、当初予定していた通りの研究データを収集できていないため。ただし、すでに収集したデータを最大限に活用するための「研究の枠組み」を検討する作業に集中し、一定の成果を得られた本年度の進捗状況は、昨年度と比較して少なからず改善した。 別の問題としては、調査研究のアウトプットである。収集したインタビューデータを、研究倫理に反しない形で公表する方法を模索するのに想定以上の時間を費やし、積極的な発表ができていない。次年度の課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、渡航を伴うフィールドワークについては実施見込みが立ちづらい。そのため、昨年度の成果に基づき、研究発表(口頭・論文)に集中する。その過程で、「ディスカバー、ジャパニーズー『二つの祖国』『山河燃ゆ』論争と〈日本人〉の境界」(福間良明編『昭和50年代論』みずき書林、2022)など、既発表論文のフィードバックを得る機会も設け、本研究を批判的に見直しながら執筆を続けたい。昨年度行なった書評執筆((佐藤卓己『メディア論の名著30』(ちくま新書、2020年)『京都メディア史研究年報』(7号、2021年)所収)や、論評(伊藤守編『ポスト・メディアセオリーズ』ミネルヴァ書房、2021年)オンライン書評会、2021年7月)から得るものが大きく、他者とのコミュニケーションを通して研究を進めていくという原理原則の重要性を改めて実感したからである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、海外出張計画を修正したため。
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Research Products
(7 results)
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[Book] 昭和50年代論2022
Author(s)
福間良明編(松永智子)
Total Pages
648
Publisher
みずき書林
ISBN
978-4-909710-21-5