2016 Fiscal Year Research-status Report
日本人英語学習者のリスニング理解にノイズが与える影響の研究
Project/Area Number |
16K16869
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤田 亮子 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00756281)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | リスニング理解 / ノイズ / 語の予測性 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々の日常生活は、ノイズに溢れている。しかし、英語のリスニング学習場面では、学習者はヘッドフォンをするなどして、ノイズの全くない状態で英語を聞くことが多い。そのため、多くの場合、ノイズのある音声に学習者は慣れていない。そのような学習者が、実生活でノイズのある音声を聞いた時に聴解がどのように変化するかは、検証すべき重要な研究対象である。 本研究は、ノイズが日本人英語学習者のリスニング理解に与える影響を検証することを研究の大きな目的とし、今年度は、量的研究によってノイズの種類と文の予測性に焦点を当てた。日本人大学生を対象にして、語の予測性の有無とノイズの度合いの違いによって、リスニング理解が異なるかを検証した。リスニング音声は、文の最後の単語が予測性のあるものとないものを用意した。その音声にそれぞれノイズなしと4つのレベルのノイズ (SNR = 15, 10, 5, 0)を付加し、5つのノイズ条件とした。各条件の後に、リスニング理解の自信度に関するアンケートにも回答した。2元配置分散分析の結果、ノイズの度合いと語の予測性はリスニング理解に影響を与えていた。SNR = 15とSNR = 5の条件では予測性の高い語で正答率が高かったが、ノイズなし条件では予測性は影響を与えなかった。SNR = 0の最もノイズの度合いが大きい文では、予測性の有無にかかわらず最も正答率が低かった。自信度に関するアンケート結果からは、ノイズの存在により気が散った、またノイズがあるリスニングでは集中することが難しかったというような、ノイズがリスニング理解に負の影響を与えたコメントが見られた。この実験結果より、SNR =15、SNR = 5のノイズ条件では語の予測性はリスニングに影響を与えた。また、ノイズの度合いSNR=5, SNR = 0の条件でリスニング理解に影響を与えていたことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ノイズと聴解の関係について、量的研究を行った。ノイズの度合いと文の予測性については、ノイズの度合いを4種類用いて詳細に検証することができた。ノイズの種類については、本研究では1種類のノイズのみを用いたため、今後は、英語文や日本語文のノイズなど、ノイズの種類によって影響は異なるかを検証していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究ではノイズの度合いを4種類用いたが、最もノイズの度合いが大きいSNR=0では、正答率が極端に低く、ノイズの度合いが大きすぎるとのコメントを実験参加者から得たため、今後のノイズの度合いはSNR=0を省略し、SNR=5から始めることを検討している。 今年度の発話プロトコルを用いた質的研究においては、ノイズがある状態のリスニング問題に解答する際、どのように解答に至ったかを、実験参加者は口頭で解答する。ノイズがある音声のリスニング理解を、質的に検証することで、量的研究では分析できなかった。次年度は、ノイズつきリスニング理解の過程を詳細に検証する。実験手順としては、熟達度の異なる15名の実験参加者(上位5名、中位5名、下位5名)に対して、リスニングテストを行い、発話プロトコル法で解答する。発話プロトコル法により得た音声データについては、研究協力者と共に分析し、ノイズの種類と度合い、文の予測性に関するコメントを抜粋し、コード化し、熟達度別に比較する。分析結果について、ノイズ下での聴解と学習者の熟達度の関連性について考察をする。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、ノイズとリスニングに関する実験を担当授業の中での活動として行うことで、実験協力者への謝礼の人件費の効率化を図ったことが主な理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度で行う、データ収集後の分析の人件費に充てる予定であり、研究の更なるスピードアップ、精緻化を図る。
|
Research Products
(2 results)