2017 Fiscal Year Research-status Report
高等教育で求められる手話通訳スキルの研究―話者の論理・態度伝達のための訳出方略―
Project/Area Number |
16K16870
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
石野 麻衣子 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 特任研究員 (50589405)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 言語学 / 手話通訳 / 障害学生支援 / 高等教育 / 聴覚障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高等教育場面における手話による聞き取り通訳(音声日本語から手話への変換)における方略について、「話者の論理や態度の伝達」の視点から明らかにすることを目的としている。まずモデル手話通訳を撮影・分析し、次にろう者による評価を実施することで、論理や態度の伝達をどのような訳出が可能にしているのか明らかにする。また、通訳技術や、それを習得するために必要な体制を検討するため、先進的な取り組みを行う米国Gallaudet大学を訪れ、実態を調査することとした。平成29年度は、モデル手話通訳の分析を引き続き行い、発表及び論文投稿を行った。また、予定していたろう者による評価を平成30年度に回し、米国における調査を優先して実施した。 1)モデル手話通訳分析及び成果報告 平成29年1月~5月、モデル手話通訳の訳出を語レベルで書き出し、訳出傾向の分析を行った。この結果、主題や主題に関する説明を訳出する際 (1)起点談話の文意や起点談話内に登場するものの関係性を明確に伝えるための翻訳を行うことが重要であること (2)起点談話の語順のまま伝えることが望ましいキーセンテンスは、これが聴覚障害学生にも伝わる訳出方略が必要であること、等が明らかになった。 2)米国Gallaudet大学における調査 平成30年3月3日~13日、同大において、通訳技術及び大学における通訳体制に関する調査を行った。手話通訳学科長に通訳者養成プログラムについてインタビューを行い、ゼミの見学を行った。さらにGallaudet Interpreting Service(GIS;同大学の通訳派遣部署)ディレクター及び通訳者2名もインタビューを行い、同大の通訳派遣の実態と技術的な向上を目指すための取り組みについて詳細に伺った。また、GISの見学および通訳者が派遣されている授業の見学を行った。この成果は、障害学生支援関係の研究会等で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度前半は、高等教育場面のモデル手話通訳分析を行い、この成果を日本手話通訳学会で発表し、同学会研究紀要に論文を掲載することができた。このことで、高等教育の手話通訳に困難を感じる多くの手話通訳者に、知見を届けることができたと言える。 平成29年度後半は、米国Gallaudet大学における調査のための準備と、渡米後の現地での調査に注力した。この結果、高等教育場面において必要な手話通訳技術と、これを身に付けるために必要な研修内容、また聴覚障害学生の手話習得に通訳者が寄与するために必要な体制について、重要な示唆を得ることができた。本調査が平成29年度末に実現したため、成果報告を年度内に実施することが不可能であったこと、またモデル手話通訳のろう者による評価が未実施であったため、これらを平成30年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
米国における調査の結果をまとめ、全国高等教育障害学生支援協議会(AHEAD JAPAN)第4回大会(平成30年6月28日~29日、於東京)において発表を行い、広く関係者に成果を還元する。また、モデル手話通訳に対するろう者による評価を実施・分析し、どのような訳出方略が必要とされるのかを明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
米国における調査の実施がやむを得ない事情で年度末になり、この成果報告を年度内に行うことが不可能であったため、平成30年度に実施することとなった。また、平成29年度は米国における調査を優先して実施することとなったため、モデル手話通訳のろう者による評価の実施を平成30年度に行うこととした。これらを平成30年度実施するため、次年度使用額が発生した。
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