2018 Fiscal Year Research-status Report
第二言語読解における推論の活性化・統合・妥当性プロセスの検証
Project/Area Number |
16K16879
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
清水 遥 東北学院大学, 文学部, 准教授 (20646905)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 英語教育 / リーディング / 推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、RI-Val processで提案されている3つのプロセス(活性化、統合、妥当性)に基づき、L2学習者の推論生成プロセスを検証することである。本研究で研究対象とする推論は、要点や主題といった包括的な理解に必要不可欠な役割を果たす。例えば、“It was very late when the secretary got home and she took off her clothes, put on pajamas and turned off the light. In her dream, she saw the famous actor she always wanted to meet.” という文を読んだ際、読み手は2文間の理解の一貫性を保つために “She went to bed.” という推論を補いながら理解する。本研究では読み手のワーキングメモリー (WM) に保持されている情報を結び付けて生成される局所的推論とWM内に以前読んだ情報を再活性化する必要がある大局的推論を扱い、学習者の推論の生成プロセスを検証する。 平成29年度の調査において、日本人EFL学習者を対象とし、妥当性プロセスの検証を行ったが、局所的推論の生成は確認できなかった。この結果は、申請者の以前の研究結果とは矛盾しており、その原因は協力者の英語熟達度の違いによるものであることが考えられた。 平成30年度は英語母語話者に対して、同様のマテリアルを用いて、局所的推論の生成の有無の検証を行い、L1とL2の結果を比較した。その結果、英語母語話者では局所的推論の生成が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で使用したマテリアルでは、推論の生成のし易さを意味的関連性の観点から2段階設定している。本年度実施した調査から、本研究のマテリアルは英語母語話者の推論生成に妥当なものであり、どちらの条件においても推論を生成できることが示された。一方で、日本人EFL学習者は推論が生成し易いと予測していた条件でも推論を生成することができなかったことから、意味的関連性の要因を再調整する、もしくは、妥当性プロセスが生じる前のプロセスである活性化プロセスを検証する必要がある。これにより、大局的推論の検証が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果を踏まえ、今後の推進方策は以下の3点である。 1.推論の生成のし易さを左右する要因である意味的関連性を見直し、推論の生成に必要な文脈手がかりをマテリアル内に追加するかどうかを検討する。 2. RI-Val processの妥当性プロセスより前に起こると仮定されている活性化プロセスが原因となっている可能性があるため、活性化プロセスに焦点を当てた実験を行う。 3.1, 2の結果に応じて、同様の実験手法を用いて大局的推論の検証を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた調査を次年度に持ち越したため、協力者謝金の繰り越しが生じた。
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