2017 Fiscal Year Research-status Report
日本語話者による中国語機能語の習得に関する実証的研究
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16K16886
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
劉 驫 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (00756223)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 機能語 / 誤用タイプ / 習得難易度 / 教授方法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、中国語機能語の習得難易度と誤用タイプの理由について考察を行った。ここでは、“了1”と“了2”を例に説明する。 一般に、動詞の直後に置く“了1”は「動作の完了」を表し、文末に置く“了2”は「変化」を表す説が主流となっている(呂(1999),木村(1997, 2012)など)。また、“了1”は過去の動作の完了だけでなく、従属節に用いて「未来の動作の完了」を表すことができる。さらに、“了2”は「状況や出来事の確認・報告」を表すことができる(劉(2016)など)。 この2つの項目における4つの機能の習得難易度と誤用タイプ別難易度を調査した結果、正解率が最も高かったのは、“了2-A(変化)”である。これは、「変化」の意味を文脈的に捉えやすいからであると考えられる。一方で、すでに発生した状況や出来事の確認・報告を表す“了2-B”と、過去の動作の完了を表す“了1-A”を区別することが難しいため、正解率が低かったと推定される。なお、従属節に用いて「未来の動作の完了」を表す“了1-B”は、形式的に覚えやすいはずであるが、実際のところ正解率が低かった。 研究結果をまとめると、①動詞接辞の“了1”は文末助詞の“了2”より習得しにくいこと、②誤用のタイプで「脱落」と「位置」の誤りが最も多く出現していることが分かった。この観察結果から、次のような推論が導かれる。“了1”と“了2”の意味と機能よりも、その文中における位置を十分に理解されていないと考えられる。このため、荒川(2010)、三宅(2010)、山崎(2010)が指摘するように、談話における“了1”と“了2”の意味と機能について明示的に説明しても、学習者には中国語文法や言語学に関する十分な知識がない場合には、それを論理的、分析的に理解できない可能性が高い。以上の研究結果は、劉驫(2018)にまとめられ、発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は特に難しいとされる中国語機能語の習得難易度と誤用タイプの理由について考察を行い、正しいと考えられる結論を導くことができた。これらの結論は、機能語に関する効果的な教授方法の提案と、中国語教育文法の構築に貢献できると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最後の年度であり、前年度の中国語機能語の習得難易度と誤用タイプの理由に関する分析結果をもとに、機能語に関する効果的な教授方法の提案を試みる。その上、研究成果を論文としてまとめ、学術雑誌に投稿する予定である。
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