2016 Fiscal Year Research-status Report
実践クラスルームコミュニティーにおける新人英語学習者の移行: 理論と実践の統合
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16K16891
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
長尾 明子 龍谷大学, 国際学部, 講師 (60570124)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Communities of Practice / SFL / Genre / Writing-to-learn / FL writing / Novice learners |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、Lave and Wenger(1991)の実践共同体の学習観モデルをフレームワークに使用し、(1)英語学習者がどのように新人から経験者に移行するか、(2)クラスルームコミュニティーの生成と発達の活動パターンを解明することである。以下の研究課題を設定した。RQ(a)クラスルーム実践共同体の生成、機能および要素、活動パターンの可視化, RQ(b)英語学習を文脈とした実践共同体内のコアー、アクティブ、正統的周辺参加者の定義, RQ(c)新人から経験者へどのように移行するか
英語能力上級クラスと中級クラスの異なるグループを対象(N = 51)に, 以下のデータを収集した。RQ(a)を検証するために質問紙調査を実施した。RQ(b)(c)を検証するために,学習者が記述したジャンルエッセーのデータを収集した。さらに,学習者の自己内省自由記述文データを収取した。自己内省自由記述文の種類は3つに分かれている。はじめに,「(1)自身の英語能力・知識・技術、(2)実践共同体に参加する他メンバーとの関わり、および(3)参加度合いについて」である。次に,「ジャンルアプローチ実践や関連するグループワークに参加した直後に学んだことに関する自由記述文である。最後に,Wenger et al.(2002)が定義するコアー、アクティブ、正統的周辺参加者の定義を基盤に,EFL学習環境に適応可能な新定義に関してである。RQ(c)を検証するために,7名を対象に研究期間前・中・後の3回半構造化インタビューを実施した。収集したデータの中で特に,アンケートデータと自己内省文「(1)自身の英語能力・知識・技術、(2)実践共同体に参加する他メンバーとの関わり,(3)参加度合い」について,データコーディング及び分析ソフトを使用し分析が終わった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画は平成28年度に,(1)ジャンル・アプローチを導入した英語実践授業,(2)学習者が記述したエッセーデータ収集,(3) 自己内省記述文データ収集・質問紙データ収集・インタビューデータ収集, (4)論文執筆と刊行および(5) 学会発表であった。(4)論文執筆と刊行を除き,初年度は概ね計画どおり授業を展開し,データ収集および分析をすることができた。データ分析と考察の結果,さらに本研究の妥当性と信頼性を高めるために時間に関するトライアンギュレーション(Time triangulation)とデータ・トライアンギュレーション(Data triangulation)を追加する予定である。時間に関するトライアンギュレーションとは、複数のデータを時間別に収集する方法であり、この方法は質的研究において信憑性(dependability)を担保するとされる。つまり,平成29年度も初年度と同様に(1)ジャンル・アプローチを導入した英語実践授業,(2)学習者が記述したエッセーデータ収集,(3) 自己内省記述文データ収集・質問紙データ収集・インタビューデータ収集を行うことに変更した。さらに,データ・トライアンギュレーションとは、データの調査対象を複数の違うカテゴリーに所属する人から集めることである。つまり,初年度は1年生の英語能力上位と下位の複数グループからデータを収集した。平成29年度は1年生の英語能力上位と下位の複数グループと2年生以上のジャンル・アプローチライティング経験者からの同データを収集する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
英語教育に関する「理論と実践の統合」の可能性を検証するため,以下の2点の研究課題について調査を行う予定である。(a)日本における高等教育機関での英語学習環境に参加するクラスルーム単位にまとまった学習者と教員のグループ群をLave and Wenger (1991)の実践共同体の一つとして捉え、その生成、機能および要素、活動パターンを可視化しクラスルームという集団がどのように変容するかを明らかにする。(b)学習者と教員のグループ群において、学習者がどのように新人から豊かな経験ある学習者へ移行するかを明らかにする。新人の英語学習活動を(1)英語の知識や技術、(2)学習者と他メンバーとの関わり、(3)学習者の参加度合(新人から経験ある学習者への熟達度)を基準に観察し、新人から経験豊かな学習者へ移行する為に必要な規則、要素、能力、経験、媒介は何かを明らかにする。 初年度と同様に,ジャンル・アプローチを主とした英語のライティング及びリーディングクラスを実践する。(a)について,Ribeiro (2011)研究を参考に,5件法による10項目のアンケートデータを研究期間の前・中・後期の3回実施する予定である。(b)については,学習者が記述したジャンルエッセーと学習者の自己内省自由記述文データを収集する予定である。データー分析を行い初年度に収集したデータグループと本年度の研究対象グループの比較分析を検討している。
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Causes of Carryover |
計画的に支出を試みたが残高があった。物品費支出にさらに比重を置くべきであった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費支出および旅費支出を増加させるとともに,こまめな残高確認をすることで問題を解決する。
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