2018 Fiscal Year Research-status Report
Identityの構築の軌跡と語用論的第二言語運用の変容:長期留学を通して
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16K16893
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野上 陽子 関西学院大学, 法学部, 助教 (90733999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 留学,study abroad / アイデンティティ,identity / 共通語としての英語 / ELF / social networks / 語用論,pragmatics / attitude / EMI |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度前半期においては予定通り、研究協力者1名の海外留学先へ行きフィールドワークを行った。チェコ共和国において、1) 留学中の実際言語使用におけるidentityの現れを調査する談話研究+回顧的インタビュー調査、及び留学の経験を通してどのように自分自身の英語に対する考え方が変わったかなどを問うインタビューを実施した。談話研究においては、日本人研究協力者とその友人が参与する英語のインタラクションの様子を録音録画し、回顧的インタビューでは英語インタラクション中の言語行動についての意識や理由、また彼らの経歴などについて聴き取り調査を行った。 2018年度後半期には研究協力者2名の海外留学期間が終了後、彼らの2)留学後の意識、identityについての調査、3)留学後の語用論的L2運用とidentityの関連についての調査のためのデータ収集を行った。留学前から留学後にかけて、研究協力者の英語に対する意識や、英語と自身の関係性、identityが変容しているのか、またどのように変容しているのかを明らかにするためのデータ収集である。 更に前年度までに収集したデータを元に調査結果を一つまとめた。前述と同じ2名の日本人大学生の留学前から留学中の経験に関するナラティブを元に、彼らの言語に対する意識調査とidentityの構築の関係についての研究結果をまとめた。研究成果としては、2018年12月に中京大学名古屋キャンパスで開催されたJACET ELF SIG Meetingで口頭発表を行った。その後、この口頭発表を元に研究論文を執筆し、2019年又は2020年にPalgrave Macmillanより出版される編集本へ投稿済である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度までの研究の遅れが原因となり、研究全体の進捗状況は引き続き遅れ気味である。しかし、本研究計画で当初より予定していたデータ収集はすべて2018年度までに完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は前年度までの3年間で収集したデータの整理(インタビューデータの逐語録や談話データの書き起こしの作成なども含む)、分析の継続、分析結果の検証を行い、学会での口頭発表や論文発表を通して調査報告や成果公開をする。下記の3点が本年度に明らかにしたい主な調査課題である。 ①留学前から留学後にかけて、研究協力者の英語に対する意識や、英語と彼ら自身の関係性、identityが変容しているのか、またどのように変容しているのかを明らかにする。アンケート調査を元とした半構造的インタビューや日記観察により得たデータを解釈学的方法を用いて分析を進める。質的データ分析ソフトを活用し、データを効率よく整理しながら、新たな発見や理解を深めたい。また知識のある研究協力者を募り評価者間信頼性を検証し、データ分析の有効性を確かめる。 ②留学前と留学後で語用論的L2運用に変化が見られるか、また運用の理由付けに変化が見られるか調査し、identityとの関連を明らかにする。留学前と留学後に同じアンケート調査を行い、事後インタビュー調査でアンケート回答の理由などの聞き取りとしている。インタビュー調査で語られたナラティブを元に、解釈学的方法を用いて、研究協力者の英語運用に対する態度などの変化を調査する。 ③国際共通語としての英語(ELF)を通してのインタラクションの分析をする。インタラクションの録音データの書き起こしは大学院生に依頼する。インタラクション中に出てくる話者のidentityを表していると考えられる語表現やパラ言語を抽出する。インタラクション後の回顧的インタビューで得たデータもナラティブとして扱い解釈学的方法を用いて分析を進め、談話分析のデータと関連付けながら検証を行う。インタラクション中に話者それぞれがどのようにidentityの交渉を行っているかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
研究協力者へのインタビュー調査費用のため前倒し支払い請求を行ったが費用を抑えることができた為、次年度使用額が生じた。次年度使用額はデータ分析補助(インタビューデータの逐語録の作成や談話データの書き起こし)に使用する。
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[Book] English-Medium Instruction from an English as a Lingua Franca Perspective: Exploring the Higher Education Context2018
Author(s)
Kumiko Murata, Jennifer Jenkins, Clarissa Menezes Jardao, Maria Kuteeva, Joo-Kyung Park, Masakazu Iino, Ute Smit, Patrick Ng, Jaroslaw Kriukow and Nicola Galloway, Mayu Konakahara, Yoko Nogami, Ying Wang, Nobuyuki Hino, James D'Angelo, Masaki Oda, Elana Shohamy
Total Pages
302
Publisher
Routledge
ISBN
978-0815395171