2019 Fiscal Year Research-status Report
Identityの構築の軌跡と語用論的第二言語運用の変容:長期留学を通して
Project/Area Number |
16K16893
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
野上 陽子 関西学院大学, 法学部, 助教 (90733999)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ELF / identity / pragmatics / narrative approach |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、研究代表者の勤務校において急な教員欠員があり、研究代表者の教務が多忙となり、予定をしていたインタビューデータの逐語録の作成、分析、研究結果の発表を行うことができなかった。また、一方で、前年度までに継続してきた研究の成果が、論文として公開された(又は公開予定)。そのなかで、海外へ長期留学をした2名の大学生の留学前と留学中に行ったインタビューを元に、彼らの英語に対する態度や考え方、現地の言語に対する態度や考え方の変化について論じた。English as a lingua franca (ELF)のコミュニケーションの経験や、現地で彼らが構築した(又は構築できなかった)social networkの質や深さ、social networkでの使用言語(例えば、英語、現地の言語、日本語)が複雑に彼らのアイデンティティ構築に影響を与えていた。近年英語圏以外への国で英語を教授言語(EMI)として用いる大学、教育機関への留学の機会が増えるなかで、EMI環境でのELFの役割や、ELF使用者の言語や他文化に対する態度が明らかにされていかれなければならない、と課題も見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究全体の進捗状況は少々遅れている。令和元年度は前年までに収集したデータの整理、分析の継続、分析結果の検証を行い、調査報告や成果公開をする予定であった。しかし令和元年度は研究代表者の教務の多忙(教員欠員のため)と体調不良が続き、本課題の研究を進めることができなかった。唯一、次年度の夏に開催予定であった国際学会での研究発表の機会を年度末に得ることができた。(しかしコロナウイルス蔓延のなか、本学会は2021年度へ1年延期となった。)
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は収集したデータの整理(インタビューデータの逐語録や談話データの書き起こしの作成なども含む)、分析の継続、分析結果の検証を行い、学会での口頭発表や論文発表を通して調査報告や成果公開をする。下記の3点が令和2年度に明らかにしたい主な調査課題である。 ①留学前から留学後にかけて、研究協力者の英語に対する意識や、英語と彼ら自身の関係性、identityが変容しているのか、またどの様に変容しているのかを明らかにする。アンケート調査を元とした半構造的インタビューや日記観察により得たデータを解釈学的方法を用いて分析を進める。質的データ分析ソフトを活用し、データを効率よく整理しながら、新たな発見や理解を深めたい。また知識のある研究協力者を募り評価者間信頼性を検証し、データ分析の有効性を確かめる。 ②留学前と留学後で語用論的L2運用に変化が見られるか、また運用の理由付けに変化が見られるか調査し、identityとの関連を明らかにする。留学前と留学後に同じアンケート調査を行い、事後インタビュー調査でアンケート回答の理由などの聞き取りを完了している。インタビュー調査で語られたナラティブを元に、解釈学的方法を用いて、研究協力者の英語運用に対する態度などの変化を調査する。 ③国際共通語としての英語(ELF)を通してのインタラクションの分析をする。インタラクションの録音データの書き起こしは大学院生に依頼する。インタラクション中に出てくる話者のidentityを表していると考えられる語表現やパラ言語を抽出する。インタラクション後の回顧的インタビューで得たデータもナラティブとして扱い解釈学的方法を用いて分析を進め、談話分析のデータと関連付けながら検証を行う。インタラクション中に話者それぞれがどのようにidentityの交渉を行っているかを明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
令和元年度は前年までに収集したデータの整理、分析の継続、分析結果の検証を行い、調査報告や成果公開をする予定であった。しかし研究代表者の教務の多忙(教員欠員のため)と体調不良が続き、本課題の研究を遂行することができなかった。このため次年度においてはインタビューの逐語録の作成、談話データの書き起こしの作成を行う。また、海外の学会で研究成果の報告を行うための旅費として使用する。
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[Book] English as a Lingua Franca in Japan: Towards Multilingual Practices2020
Author(s)
Mayu Konakahara, Keiko Tsuchiya, Yoko Nogami, Nobuyuki Hino, Masakazu Iino, Barbara Seidlhofer, Henry Widdowson, Ayako Suzuki, Tomokazu Ishikawa, Tetsuo Harada, Akiko Otsu, Masaki Oda, Yasutaka Yano, Yukako Nozawa, Miyuki Takino, Ayano Shino, Akiko Otsu
Total Pages
358
Publisher
Palgrave Macmillan
ISBN
978-3030332877
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[Book] ELF Research Methods and Approaches to Data and Analyses: Theoretical and Methodological Underpinnings2020
Author(s)
Kumiko Murata, Yoko Nogami, Henry Widdowson, Barbara Seidlhofer, Alessia Cogo, Anna Mauranen, Sayoko Maswana, Marie-Luise Pitzl, Lixun Wang, Ying Wang, Jagdish Kaur, Kaisa Pietikainen, Alan Thompson, Masuko Miyahara, Tomokazu Ishikawa
Total Pages
321
Publisher
Routledge
ISBN
978-0367898793