2016 Fiscal Year Research-status Report
聞き手の承認反応が第二言語学習に及ぼす効果とその神経基盤の解明
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16K16894
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
中川 恵理 生理学研究所, 情報処理・発信センター, 特任助教 (20734940)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 相互作用 / 外国語学習 / 語彙学習 / 言語産出 / 承認反応 / fMRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,他者との相互作用,とくに聞き手の反応が第二言語学習に与える効果とその神経基盤を明らかにすることである。聞き手から返される「発話内容を理解した」という反応が報酬として機能し未知語の学習を促進するかを,心理言語学的行動実験および機能的磁気共鳴画像法(fMRI)により検討する。平成28年度の主な研究成果は以下の通りである。 1.未知の疑似英単語を発話した後に聞き手から返される反応(フィードバック)によって,話し手が感じる嬉しさが異なるかどうかを調査する行動実験を行った。データ解析の結果,発話後に聞き手から承認反応(頷き)が返されるときは,否定的な反応(首振り)や無反応(静止)の場合よりも気分評定値が有意に高いことが確認された。行動レベルで差がみられなければそれに対応する脳活動の検討もできないため,本予備実験で得られた結果はfMRI実験を実施するために必須の重要な成果である。 2.聞き手からフィードバックを受けたとき話し手が感じる嬉しさの神経基盤を明らかにする,また,フィードバックの種類によって語彙学習効果に差はあるかを明らかにするため,fMRI実験を行った。実験参加者,または実験参加者に代わってコンピュータが未知の疑似英単語を発音すると,それに対して聞き手である英語教師から三種類のフィードバックが返された。本実験では予備実験と同じ三種類の動画フィードバックだけでなく,静止画に文字(GOOD, BAD, SOSO)を組み合わせたフィードバックを返す条件も含めて実験を実施した。現時点で26名の日本人英語学習者のデータを取得済みであり,解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,予備実験として行動実験を実施したうえでfMRI実験を実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施したfMRIデータの解析をすすめる。当該実験では研究計画に少し変更を加え,話し手が「自分ではない他者(コンピュータ)」の条件を含めて実験を実施した。これにより,聞き手の反応が「他人ではない自分の行動」に随伴していた場合とそうでない場合を比較することが可能となる。データ解析の結果をみて,必要に応じて追加のデータ収集も行う。平成29年度は本実験のデータを解析して得られた成果をまとめ,Organization for Human Brain Mapping等の国際学会にて発表する。成果をまとめた論文は平成29年度内に学術雑誌への投稿を行う。また,これと並行して次のfMRI実験を実施する。
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Causes of Carryover |
実施した実験に平成28年度中に参加した被験者の数が当初予定していたよりも少なく,謝金として計上していた分をすべて使用しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に追加のデータ収集や新しく実験を実施するのでその際の被験者謝金として使用する。
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