2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K16897
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
及川 琢英 北海道大学, 文学研究科, 専門研究員 (30553036)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 満洲国軍 / 奉天軍 / 陸軍士官学校留学生 / 日中戦争 / ノモンハン戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書中の「平成30年度以降の研究実施計画」に概ね基いて本年度の研究を遂行した。 第一に奉天軍内における陸軍士官学校留学八期生について分析した。張作霖が南北武力統一策を推進する段祺瑞ら安徽派と結んで実行した南征への参加は、八期生の最初の顕著な動きであった。関内に入った奉天軍の総司令部参謀長に楊宇霆が就任したほか、吉興、王茲棟は総司令部参謀、丁超は兵站処長、于珍は補充第二旅長、臧式毅は孫烈臣部隊の連長となった。楊宇霆は副司令徐樹錚とともに大功を挙げようと南征に力を入れようとするが、奉天からの武器の流用が発覚し、張作霖によって更迭されてしまう。丁超、于珍は同じく更迭されたものの、そのほかはその地位に留まった。すなわち八期生は楊宇霆に近いグループとそれ以外の間で分化が生じていったことがわかる。 八期生のなかでも楊宇霆とは距離を置く者たちは、孫烈臣や呉俊陞、張作相ら旧派の庇護下で、中東鉄路護路軍など黒龍江省や吉林省で地位を確立していった。旧派が日本に対抗する姿勢をみせたように、八期生も単純に「親日」的といえるような存在ではなかった。 第二に満洲国軍の対外作戦について研究を進めた。一九三七年日中戦争が全面化していくと、満洲国軍は関東軍とともに 華北に出動していった。三八年にはカンジュルジャブを司令官とする甘支隊が華北に派遣され、ゲリラ戦を仕掛ける八路軍と戦闘を繰り広げ、一定の成果を挙げ、日本側の信頼を得ることとなった。しかし、以上のような満洲国軍の活躍ぶりは、戦況が日本側に有利にあるという条件によって大きく規定されていた。三九年ノモンハン戦争以降にみられるように、日本側が守勢に回った場合や劣勢の状況に置かれた場合、綻びをみせていった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画通りに満洲国軍前史として奉天軍内における陸軍士官学校留学八期生、満洲国軍の対外作戦に関して研究を進めることができた。さらなる史料収集、分析が必要であるが、日露戦争期から満洲国崩壊期までを連続的に捉える視角がまとまりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においては、満洲国軍の対外作戦についての研究、満系軍官の日記や回想録の分析を進める。そして日露戦争期から満洲国崩壊期までの一連の研究を著作としてまとめる作業を進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、予定していた史料調査を取りやめたことにある。
使用計画としては、文献の入手にかかる費用のほか、史料調査のための旅費に充てる。
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