2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16898
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前田 亮介 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (00735748)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大蔵省 / 世界恐慌 / 戦後復興 / 政党政治 / 日本政治外交史 / 日本近現代史 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の第1年度目となる本年度は、当初の研究計画に沿って、政党政治と大蔵省の関係という日本近現代史研究でほとんど問われてこなかった問題群に接近すべく、明治期から戦後復興期まで研究状況と史料状況を広く捕捉する作業に努めた。 第一に、政党のプレゼンス低下に伴い、大蔵省の役割が再編されていく1930年代に注目した。とくに世界恐慌への政治的対応というテーマについて、(ⅰ)国立国会図書館憲政資料室、東京大学附属近代日本法政史料センター、同経済学部資料室、国文学研究資料館、で史料調査を行い、さらに(ⅱ)ヨーロッパやアメリカの恐慌期を分析した近年の政治外交史研究の成果を摂取した。これによって、1920年代の政党政治と国際協調を支えてきた日本の大蔵省や政府系銀行の官僚が、戦時体制と帝国経済秩序の積極的な担い手に移行していく日中戦争前後の力学について、新たな理解を得ることができた。 第二に、昭和戦前期に比べて大蔵省の研究が進展している占領期~戦後復興期についても、近年の経済史・政治外交史の知見を摂取しつつ、とくにこれまであまり分析されないまま大量に残されている大蔵官僚やバンカーの回顧録・追悼録、および日本銀行金融研究所アーカイブ、北海道開発協会開発調査総合研究所、国立公文書館が所蔵する一次史料を収集した。大蔵省文書や米国務省文書を活用した経済史の進展に比べて、政党政治との関係については(戦前と同様に)未解明の点が少なくないことが明らかになった。 第三に、以上の成果の中間報告として、慶應比較政治セミナーでの招待講演「戦後日本の公的金融機関と政党政治:1949~1957年」で、戦後復興期の公的金融機関をめぐる政治過程を戦間期と比較しつつ検討した。比較政治の専門家から貴重なコメントをいただくことができ、政党政治の崩壊と再建という展望の下にこの問題を位置づけることの重要性を再確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画において、平成28年度は、第一に、近代日本の政党政治と大蔵省についての文献と史料(情報)を広く収集することが目標であった。この計画通り、戦間期から戦後復興期にいたる政治外交史・経済史研究の知見を摂取するとともに、大蔵官僚や政府系銀行関係者に関する従来ほとんど使われてこなかった一次史料を収集し、検討を行うことができた。 第二の作業目標は、政党政治の盛衰と大蔵省の政治的役割の変化を関連づけて分析する視角を発見することであった。このうち、戦後復興期の公的金融機関をめぐる政治過程については、上記の招待講演で報告することができた。ただ、政党が力を持っていた1920年代については、報告準備を優先したこともあり、1930年代や戦後に比べて大蔵省との関係を窺わせる重要史料を発見することができなかった。この作業については継続的課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、平成28年度の成果に基づき、占領期~戦後復興期の公的金融機関と政党政治について論文執筆の準備を進める。植民地銀行の戦前と戦後についても、成果の刊行を予定している。 第二に、戦間期、とくに日本近現代史の研究が手薄な1920年代の大蔵省について、イギリスをはじめとする諸国との国際比較を通じて輪郭を浮かび上がらせる作業を行う。政党制との関係において、国民への再分配の問題とともに鍵となるのは中国問題であり、近年公刊された国民政府指導者の私文書を収集しつつ、在外研究の機会を利用してイギリスでの史料調査を本格的に開始する。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究費に関しては、25,107円の残額が生じた。これは、経費の節減・効率的使用によって発生したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この残額は平成29年度の比較的早い段階で、大蔵官僚の回顧録等を購入するために使用する。
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