2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16898
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前田 亮介 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00735748)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大蔵省 / 世界恐慌 / 帝国 / リース・ロス / 植民地銀行 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間の第2年度目となる本年度の目的は、前年度の成果を前提に、1920年代から1930年代の大蔵省と中国政策の関係を、イギリス・アメリカをはじめとする諸外国との国際比較のなかで検討することであった。とくに本年度は、2017年9月からロンドンでの在外研究を開始したこともあり、受け入れ教員であるLSEのアントニー・ベスト教授の助言を仰ぎつつ、イギリス政治外交史についての資料調査をイギリス国内とヨーロッパ各地で集中的に行った。 具体的には、イギリス国立公文書館、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)、ケンブリッジ大学チャーチル・カレッジ、オックスフォード大学ボドリアン図書館などが所蔵する対日政策・対中政策関係の公文書・私文書とともに、従来の政治外交史研究であまり活用されてこなかったイングランド銀行、香港上海銀行(HSBC)、ドイツ連邦準備銀行、フランス経済・財務省、といった経済系諸機関のアーカイブに出向き、この他、ペール・ヤコブソンやジャン・モネといった国際金融家の私文書を所有するバーゼル大学、ローザンヌ大学、国際連盟アーカイブでも史料を収集した。 その結果、イギリスの極東政策に占める大蔵省や国際金融家の比重の大きさをあらためて確認でき、新旧の国際金融家における中国政策観の相違や、専門家集団と政党政治の間の緊張関係について、知見を深めることができた。日英両国の利害が衝突した1933年のロンドン経済会議や、中国幣制改革(リース・ロス・ミッション)といった研究史の厚い主題について、今後こうした史料群から再解釈したいと考えている。 本年度の成果としては、朝鮮銀行、戦後北海道開発、初期貴族院についてそれぞれ論文を執筆し、2018年度中に刊行される予定である。また、大日本帝国憲法についての概説が公刊された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の成果に基づく戦後復興期の政治史に関する成果を2本執筆できた上、当初の研究計画どおりイギリスを中心とするヨーロッパ各国での史料収集を順調にできたため。やはり前年度に収集した日本側の1930年代の史料と今後総合して検討したいと考える。 ただ他方で、前年度に「継続的課題」として記した1920年代については、イギリスでも史料収集に努めたものの、本研究課題に即していえば、HSBCアーカイブをはじめ1930年代の史料の方に見るべきものが多いことを再認識した。研究の方向の根本的修正を伴うものでは全くないが、今後は1930年代により重点を置いて研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、平成29年度の成果に基づき、ロンドン経済会議および中国幣制改革における日英関係について、両国の大蔵省と政党政治の役割に注目しつつ論文の執筆準備を進めたい。政府系銀行に加え、1930年代の対日経済外交に影響を与えたイギリス産業連盟(FBI)、イギリス銀行協会、マンチェスター商工会議所などの経済団体、ジョン・スワイヤ商会やジャーディン・マセソン商会などの企業の史料も調査する予定である。 第二に、これまでほとんど検討できなかった中国国民政府の経済政策と世界恐慌後のアメリカの銀政策について、2018年9月からプリンストン大学で予定している在外研究の機会を利用して、アメリカ合衆国で史料を集中的に収集する。
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