2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K16898
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
前田 亮介 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (00735748)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大蔵省 / 日米関係 / 国際金融家 / 連邦 / 帝国 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間第3年度目となる本年度の目的は、第一に、1930年代の極東(中国)政策をめぐるイギリスの財政金融関係者や圧力団体の認識、第二に、銀政策と日本問題を焦点とした当該期の米中関係の推移を跡づける作業にあった。そしてこの両作業から、戦間期日本の政党政治が直面した国際的制約を再構成することがめざされた。 前者については、ロンドンメトロポリタン文書館、ニュースUK文書館、ランベス宮殿文書館、ケンブリッジ大学レン図書館、キングスカレッジ、マンチェスター中央図書館、同ベリー分館、マンチェスター大学、ウォーリック大学、バーミンガム大学、スコットランド国立文書館、RBS文書館、さらにフランス外交史料館、ドイツ連邦公文書館・外務省政治文書館、イタリア銀行文書館など、イギリス国内外での史料調査を精力的に行った。以上を通じて、連邦のような空間秩序観が1930年代の対外経済政策に与える影響を確認したため、英語圏での国際関係史の最新の研究書の書評を執筆し、また戦前日本の道州制構想や戦後の北海道開発に関する論考を発表した。国際学会(BAJS)の年次大会で行った、明治維新期の内戦と軍隊建設についての報告も、通底する問題意識に基づいている。 後者については、2018年9月にプリンストン大学に在外研究拠点を移したことに伴い、受け入れのシェルドン・ギャロン教授と相談しつつ、先行研究と一次史料の効率的摂取を試みた。教授の大学院演習に参加し報告も行うことで、英語圏の日本研究のトレンドと、政治外交史と親和的なグローバル・ヒストリーの諸成果を吸収できた。この成果は、日米の史学史の架橋をめざした岡義武『明治政治史』上巻の解説に直接反映された。また学期終了後は、プリンストン大学、コロンビア大学、イェール大学、アリゾナ大学で、国際金融家やFDR政権の極東政策を支えた経済官僚の個人文書を広く収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、本年度におけるイギリスの財政金融当局、エコノミスト、圧力団体の一次史料の調査に基づき、1933年のロンドン経済会議や、中国幣制改革(リース・ロス・ミッション)における日英関係を、両国の大蔵省と政党政治を軸に分析し、従来よりも立体的な1930年代の国際政治経済史の構築をめざすはずであった。ところが、ケインズやレフィングウェルといった国際金融家のさまざまな秩序構想を検討するうちに、対外交渉や内政・外交の連関といった政治外交史の次元だけではなく、帝国の連邦主義的再編のような当時の思想動向も視野に入れて問題を再構成する必要に気づかされた。こうした英語圏のインテレクチュアル・ヒストリーやグローバル・ヒストリーの豊穣な成果の摂取に相応の時間を要したものの、これは必ずしも回り道ではなく、より包括的な歴史理解の不可欠の前提となるものと考えている。また結果として、アメリカの極東政策に関する研究史理解を更新することにもつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、平成30年度までの一次史料収集の成果に基づき、1930年代の国際経済秩序をめぐる日本・イギリス帝国関係に関する論文を一刻も早く執筆することがめざされる。また、1930年代日本の大蔵省と政党政治に規定的な影響を与えたアメリカおよび中国の動向については、まだ一次史料の収集が不十分であるため、FDR大統領図書館、アメリカ議会図書館、ハーバード大学などに複数回の出張が不可欠である。中国については、スタンフォード大学フーバー研究所の閲覧室が長期閉館となったことが痛恨であるが、滞在拠点のプリンストン大学図書館は関連の公刊史料集、電子化史料とも充実しており、またコロンビア大学バトラー図書館にも未見の一次史料が少なからず残されており、在外研究の機会を生かして効率的な時間配分に努めたい。
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Causes of Carryover |
平成30年度の研究費に関しては、200,000円の残額が生じた。これは、経費の節減・効率的使用に加えて、当初予定していたスタンフォード大学での長期史料調査が一時閉館によって取りやめになったことで生じたものである。
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