2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16901
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 珠紀 東京大学, 史料編纂所, 助教 (10431800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 古記録 / 日本中世史 / 史料学 / 朝廷 / 官司制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は以下の通りである。まず古記録史料の検討を行う。日本中世の政治史・制度史、特に畿内・朝廷関係の検討にあたって必須の基幹史料の一つが古記録である。中でも南北朝期から織豊期には、前代に比べて多様な階層の人々が日記を記しており貴重な情報が多い。しかしながら当該期の古記録研究は、他の時代に比して立ち遅れており、十分な利用がなされているとは言いがたい。そこで本研究課題では、南北朝期から織豊期の古記録の所在を調査し、特に重要なものは史料的性格を明らかにし、翻刻、フルテキストデータ作成などを行う。その上で通時代的な政治史・制度史の再検討していきたい。 三年目に当たる本年度は、岐阜県各務原市内藤記念くすり博物館、京都府京都市東山御文庫、東京都早稲田大学附属図書館、千葉県佐倉市国立歴史民俗博物館などに赴き、所蔵史料の調査をさせていただいた。その成果は、共著「宣教卿記 天正三年正月~五月記」(『早稲田大学図書館紀要』六六)、共著「『兼見卿記』紙背文書」一・二(『ビブリア』一四九号・一五〇号)、共著「綱光公記 宝徳二年正月~三月記」(『東京大学史料編纂所研究紀要』二九)などの形で史料紹介を行った。いずれも大部の史料であり、令和元年度以降も史料調査・翻刻を進めていく予定である。また「上賀茂社社司日記永禄八年九年」は全文データ化し、史料編纂所「古記録フルテキストデータベース」において公開した。 史料の伝来等に着目した研究成果として「伝えられた知識と失われた知識」(前田雅之編『画期としての室町』勉誠出版)「年中行事絵 承安五節絵」(佐藤信・小口雅史編『古代史料を読む 下平安王朝篇』同成社)「朝廷の政治と文化」(高橋典幸・五味文彦編『中世史講義』ちくま書房)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究実施計画」を基盤に研究を進めている。本研究課題の目的の一つに、「南北朝期から織豊期の古記録の所在を調査し、特に重要なものは史料的性格を明らかにし、翻刻、フルテキストデータ作成などを行う」ことがある。計画に具体的な書目としてあげた中で、『兼見卿記』『綱光公記』は、研究課題開始以来継続して史料紹介を進めており、兼見卿記はさらに紙背文書の検討・紹介に着手している。また二〇一七年度より『中御門宣教卿記』の原本調査を開始した。二〇一八年度に一部(天正三年正月~五月)を紹介し、今後も継続して紹介を続けていく予定である。 その他の史料についても調査・検討を進めている。史料学的検討の成果と当該期の政治・社会の関係は「伝えられた知識と失われた知識」(前田雅之編『画期としての室町』勉誠出版)「年中行事絵 承安五節絵」(佐藤信・小口雅史編『古代史料を読む 下平安王朝篇』同成社)「朝廷の政治と文化」(高橋典幸・五味文彦編『中世史講義』ちくま書房)などで考察した。 以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
二〇二〇年度も引き続き室町時代の『綱光公記』、織豊期の『兼見卿記』『中御門宣教卿記』『院中御湯殿上日記』の紹介や、その周辺の史料の検討を進めていく予定である。これらはいずれも当該期を考える上での基幹史料である。史料調査のために適宜出張を予定している。またこれらの史料・検討を基に当該期の政治・社会史についても考察を進め、論文の形にまとめたい。
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Causes of Carryover |
収集・翻刻したデータの整理、情報資源化のために研究協力者の助力を請う予定で、謝金費用を考えていた。しかし研究協力者の都合、お願いする作業の準備のため、二〇一八年度中には着手できなかった。二〇一九度初頭より、研究協力者一人にお願いして作業を開始しており、その謝金に充てる予定である。
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