2017 Fiscal Year Research-status Report
大正期・昭和初期の司法省・検察に関する実証的研究:「平沼・鈴木閥」の動向を中心に
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16K16904
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
萩原 淳 三重大学, 人文学部, 非常勤講師 (50757565)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 司法省 / 検察 / 司法権 / 司法官僚 / 弁護士 / 平沼騏一郎 / 鈴木喜三郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に以下の二つの方面から研究を進めた。 まず、昭和初期の司法部において、最も重要な課題となったテロ・クーデタ未遂事件に対して、司法部が司法権を守るべくどのように対応したのかを減刑嘆願運動の展開に着目して分析した。減刑嘆願運動に着目した理由は、単なる社会運動ではなく、陸海軍等の政治勢力をも巻き込んだ政治的側面を持っていたためである。分析の結果、「平沼・鈴木閥」の影響が1930年頃から衰え、小山松吉・小原直らは「平沼・鈴木閥」と距離を取り、減刑嘆願運動とも距離を置くことで、他の政治勢力からの介入をさけるという意味の司法権の独立を志向したことを明らかにした。それらの成果を、東京歴史科学研究会例会、第二回東アジア日本研究者協議会国際学術大会、慶應義塾大学スーパーグローバルプロジェクト研究会などで報告した。また、学術雑誌にも投稿し、採択された。 次に、「平沼・鈴木閥」が推進した治安維持法の制定過程を近代日本治安法の形成過程と外国法の文脈から研究を進めた。それは治安維持法の主たる取締り対象であった社会主義や共産主義、無政府主義といった概念は、そもそも欧米に由来し、それに伴う治安立法も欧米において先行していた。そのため、日本の司法省・内務省は欧米の治安立法例を収集し、それらを参考に法を立案していたためである。分析はまだ途中であるが、過激社会運動取締法案が治安法の画期であり、司法省は米法を参照していたことなどを明らかにした。その成果を日本史研究会近代史部会で報告した。また、来年度の日本政治学会研究大会の研究報告にも採用された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昭和初期の司法部の最重要課題であったテロ・クーデタ未遂事件とそれをめぐる司法権の動向について、「平沼・鈴木閥」の動向を踏まえ、初めて実証的に明らかにでき、それらを学術雑誌に投稿し、複数の学会でも報告した。また、続けて研究を進めている治安維持法についても、外国法という新たな観点から分析し、既に学会で報告を行い、来年度の日本政治学会研究大会の報告にも採択された。また、論文の執筆も進めているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は前年度に引き続き、治安維持法に関する研究報告及び論文執筆を進め、それらに関連して、「平沼・鈴木閥」のさらなる実態解明に努める。また、最終年度は「平沼・鈴木閥」がどのような秩序観、法思想を持っていたのかについても、研究を進め、より多角的に「平沼・鈴木閥」の実像を明らかにするように努める。
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