2018 Fiscal Year Research-status Report
流鏑馬の起源・成立過程の実証的再検討─鎌倉幕府儀礼の源流と東アジア文化─
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16K16911
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Research Institution | Takachiho University |
Principal Investigator |
桃崎 有一郎 高千穂大学, 商学部, 教授 (80551150)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 流鏑馬 / 礼制史 / 儀礼 / 《礼》思想 / 武士の起源 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究実施状況報告書に記載した通り、本研究を遂行するにつれ、〈武芸型の儀礼を政府が行うこと〉が、古代・中世社会において根本的にいかなる意義を持っていたのかを追究することが不可欠だ、ということに気づいた。また、〈流鏑馬の源流の探究〉が、〈流鏑馬のほぼ唯一の担い手である武士の源流の探究〉と密接不可分である、という見通しを得た。そこで、それらに沿って、本年度は下記成果を公表した。 ①中世の武芸型儀礼がどのように行われたか、という現象面の基礎研究。鎌倉幕府の後半期、得宗家(執権を輩出する北条氏の嫡流)が幕府の事実上の支配者となった段階で、流鏑馬を含む諸儀礼がどのような意義を与えられて、どのように実践されたかを、前年度までに構築したデータベースに基づいて分析し、先行研究で未解明もしくは不十分だった事実の確定と歴史的再評価を行った。 ②儀礼の基盤・背景・条件となる〝文化〟の歴史的変遷に着目した研究。鎌倉幕府の成立という政治的理由によって、鎌倉という新たな〝核〟が誕生したことにより、それまで日本で唯一の文化的〝核〟と朝廷に見なされてきた京都が、もはや唯一の存在でなくなり、鎌倉という文化的〝核〟の成立・展開によって相対化されてゆく過程と意義を解明した。 ③昨年度までの研究の進展により、院政期に流鏑馬が記録上に登場したその時から、その担い手が武士に限られているという事実が判明している。したがって、流鏑馬の成立は武士の成立・展開と軌を一にしている可能性が高いと予想される。ところが、武士の起源論には決着が付いておらず、そもそも議論自体が進展しないまま停滞していることが、先行研究調査で判明した。そこで、〈武士が生まれた場所は、京都か地方か〉という一点に命題を絞り、一つの結論を出す作業を行った。 ④本研究のみならず学界共通の研究基盤となる未公刊史料の紹介(活字化)・共有。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
〈古代日本・東アジアに遡及した流鏑馬の源流の探究〉という本研究のテーマに即して、上記の通り、質量ともに想定以上の成果を得、特に下記の進展が見られた。 まず成果①により、流鏑馬を含む武芸型儀礼が後期鎌倉幕府でいかなる位置づけを与えられ、それが政治史といかに即応するか、という諸事実について、従来ない視角に基づく新知見を得られた。 また成果②により、流鏑馬の成立・受容の場となる中世日本の〝文化〟の基本構造を整理・確定し、どの文化がいかにして流鏑馬成立の源流たり得るかを予想する基盤を、新たに得られた。 また成果③により、武士の源流について現段階で最も妥当性が高い仮説が得られ、それと密接不可分の関係にある流鏑馬の源流を絞り込む作業が大いに進展した。 また成果④により、流鏑馬を含む儀礼史料の共有が進み、本研究のみならず学界の研究基盤全体の底上げに寄与した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記成果により、〈流鏑馬とは何であったのか〉という、本研究の出発点となる問いに対して、前提・基盤となる作業が進展した。特に、〈流鏑馬の源流の探究は、武士の源流の探究と密接不可分である〉という見通しが得られ、それを基に、〈武士の源流の探究〉を一定度まで進展させた。次に目下取り組むべき作業は、 ①〈流鏑馬の源流の探究〉へと実際に踏み込む足場として十分に使えるレベルまで、〈武士の源流の探究〉をさらに進展させる。 ②〈古代・中世日本史学の観点・要請に基づく「礼」の成立史とわが国における受容史の基礎的研究〉に着手する(その必要性は昨年度の研究実施状況報告書で述べた通り)。 の二つに絞られる。このうち、②は、残り一年という研究年度で成果が期待できるとは考えにくい大テーマであり、本研究の終了後、別途立ち上げるべき研究プロジェクトと考えている。それに対して、①はすでに着手して順調に進捗しており、あと一年で一定の有意義な成果を見込める。そこで、本研究の最終年度は①の成果をまとめ、公表して、次のプロジェクトを視野に入れた足場固めに専念する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度の研究実施状況報告書で述べた通り、本年度は本研究を円滑に進められるのに十分なスペックのPCの購入を予定し、具体的なメーカー・機種も固まっていたが、購入予定の機種の発売が本年度中に間に合わず、令和元年度にずれ込んだため、本年度は購入せず、令和元年度に購入することとした。
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Research Products
(4 results)