2019 Fiscal Year Annual Research Report
A study foreign exchange and local industry in southwest Japan during the Tokugawa period
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16K16919
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Research Institution | Asian Cultural Exchange Center |
Principal Investigator |
一瀬 智 福岡県立アジア文化交流センター, その他部局等, 主任研究員 (20543698)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 対外交流 / 国内産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、江戸時代「鎖国」制度下における国内の地域産業と対外交流との関係、対外交流が産業を通じて地域の社会・経済に及ぼした影響等について明らかにすることを目的とする。最終年度である令和元年度には、これまでの調査研究のとりまとめをおこなった。 研究の具体的成果の一つは、日本海沿岸への陶磁器流通の具体的様相について、伝世資料・出土資料および歴史資料によって明らかにしたことである。これまで近世史研究や埋蔵文化財調査による先行研究によって、瀬戸内海から畿内、江戸への流通については多くの指摘がなされてきた一方、日本海沿岸については城下町遺跡や海中遺跡の埋蔵文化財調査等によって、近年出土資料の報告が増えつつある段階にある。本研究ではこのような東北北部や北海道におよぶ出土資料や伝世資料の把握とともに、筑前福岡藩や対馬藩の藩政史料等の歴史資料から、筑前の陶磁器商人が、瀬戸内・太平洋側同様に日本海沿岸への輸送にも積極的に進出し、全国的な流通に大きな役割を果たしていたことを明らかにした。 もう一つの成果は、中国から輸入され国内の磁器生産に用いられた茶碗絵薬に注目し、その輸入量の変遷と磁器生産地への供給状況の分析から、国内の磁器生産が輸入絵薬に強く依存していた構造を明らかにしたことである。肥前や天草の磁器生産は特に国外輸出との関係が注目されがちだが、そもそも染付や色絵などの磁器生産に不可欠な絵薬は輸入品であった。だが「鎖国」制度下を通じた輸入量や磁器生産地との需給関係の分析がなされたことはなかった。肥前磁器の生産拡大に伴って17世紀中葉に始まり、毎年大量に輸入された絵薬だったが、18世紀前半を画期として大きく変化し、輸入量の減少、品質の悪化、良質絵薬の買い占め、価格騰貴という悪循環が幕末まで続き、有田や天草など各地の生産地ではその確保に苦心した様相が、本研究により明らかになった。
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