2016 Fiscal Year Research-status Report
13-15世紀ペルシア語文化圏における文芸活動の隆盛と宮廷文化
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16K16922
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 修 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (00733007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ペルシア語文化圏 / イルハーン朝 / ティムール朝 / ラシード・アッディーン / カーシャーニー / 写本研究 / 文芸活動 / 宮廷文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、イルハーン朝(1256-1357)からティムール朝(1370-1507)にかけての時代にペルシア語文化圏で編纂された文献のデータを網羅的に収集し、各文献の献呈対象者を明らかにすることで、当該時代の宮廷文化の実相を明らかにするための研究基盤の整理を行った。 1. 史料収集 ヌール・マイクロフィルムセンター(ニューデリー)、ラザー図書館(ラーンプル)、アジア協会付属図書館(コルカタ)、サーラール・ジャング博物館付属図書館(ハイデラーバード)、テランガーナ州政府東洋写本図書館・研究所(ハイデラーバード)、テランガーナ州文書館・研究所(ハイデラーバード)、ベルリン州立図書館(ベルリン)、テヘラン大学付属中央図書館(テヘラン)、議会図書館(テヘラン)、アブドゥルアズィーム廟付属図書館(テヘラン)、国立図書館ファールス州支部(シーラーズ)、エマーム・アスル学院(シーラーズ)、スレイマニエ図書館(イスタンブル)などインド、ドイツ、イラン、トルコの4カ国の図書館で写本調査を行った。一連の写本調査においては、イルハーン朝時代の歴史家カーシャーニーやハムド・アッラー・ムスタウフィーの著作の新写本を発見するなど大きな成果を得た。 2. 史料校訂 ティムール朝時代に編纂されたと考えられる著者不明の『集史続編』の校訂・訳注作業を進めた。 3. 研究成果の公表 2017年3月22日に東京大学東洋文化研究所で開催されたワークショップで Qashani and Rashid al-Din: A New Perspective on Ilkhanid Historiography という報告を行った他、『東洋史研究』に「集史の伝承と受容の歴史」という論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
史料収集が予想以上に順調に進んだため。特にハイデラーバード調査で、カーシャーニー著『歴史精髄』の写本を新たに2点発見したことは特筆に価する。この2点の写本は既存の写本目録では紹介されておらず、学界に知られてこなかったものである。『歴史精髄』には完全な写本が残っていないため、この2点の写本により新たに復元できる内容も多く、今後のペルシア語文化圏史研究に大きく寄与する発見で、現在分析を進めていることころである。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は史料収集を中心に研究を進めたが、2年目以降は史料収集と同時にその分析を進めていく。また、国外の研究者からのフィードバックを得るために、国内だけではなく国際学会での報告を積極的に行う。2017年度はトビリシで開催予定の Association for the Study of Persianate Societies の隔年大会での報告を予定している。
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