2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16923
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川西 裕也 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (30736773)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朝鮮史 / 古文書学 / アーカイブズ / 歴史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には、朝鮮時代において、国王と深い関連を有する文書がいかに認識され取り扱われていたか、という問題を取りあげて研究をおこなった。とくに、御諱(国王の本名)・御押(国王の花押)が記された資料と、御筆(国王の直筆)で書かれた資料に対する認識と処遇の様相に焦点をしぼって検討を進めた。諱や花押・自筆は、当人の同一性を表し、他者のものとは明確に区別される徴表であることから、御諱・御押・御筆は国王との密接な関連を有しているといえるためである。 まず、『朝鮮王朝実録』や『承政院日記』をはじめとする、朝鮮時代の年代記・法典・金石文・文集・日記類から、これらの文書の取り扱われ方に関する事例を集積して分析を行った。また、東京大学総合図書館・韓国国立中央図書館・韓国学中央研究院蔵書閣・ソウル大学校韓国学研究院奎章閣をはじめとする国内外の機関において、『列聖御筆』『奉謨堂奉安御書総目』『咸興客舍別諭文御筆』『宮闕志』などの未公刊史料を調査した。 その結果、次の事実が明らかとなった。朝鮮時代、御諱・御押・御筆資料は鄭重に保全・保護すべき対象と見なされており、これを汚損することは強く忌避されていた。これらの資料に対しては厚礼をもって遇する必要があり、おろそかに扱ったり、軽視したりする者は処罰の対象となった。御諱・御押・御筆資料が重視されたのは、これらの資料が、朝鮮王朝における至尊の存在である国王の個性を明確に帯びており、国王の象徴として捉えられていたためと考えられる。資料に記された内容とは特に関係なく、御諱や御押、御筆の墨跡それ自体が崇敬の対象となっており、御諱・御押・御筆資料の物神化が起こっていたことが指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料調査・分析ともに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、史料調査・分析を進める。研究成果は学会発表・論文投稿を通じて随時公表する。
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Causes of Carryover |
次年度、調査のための出張が増加することが見込まれるため、本年度の助成金の使用を控えるように調整した。次年度の調査出張で使用する予定である。
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