2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on How Ancient Documents during the Joseon Period Have Been Passed Down in Time
Project/Area Number |
16K16923
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
川西 裕也 新潟大学, 人文社会科学系, 助教 (30736773)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朝鮮史 / 古文書学 / アーカイブズ / 歴史学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、朝鮮後期(17~19世紀)において、御諱(国王の本名)・御押(国王の花押)が記された資料、御筆(国王の直筆)で書かれた資料に対する認識および処遇について検討を加えた。本研究の成果は、『朝鮮史研究会論文集』第56集に「朝鮮後期の御諱・御押・御筆資料に対する尊崇慣行」と題して発表した。 また、当時、御諱・御押・御筆資料がいかに廃棄されていたのか、その方法や過程について考察した。『朝鮮王朝実録』、『承政院日記』、各種の儀軌・謄録・文集類より、資料廃棄の具体的な方法・過程についてデータを抽出・分析した。その結果、御諱・御押・御筆資料は、そのまま燃やされたり再利用されたりすることはなく、「洗草」という手続きを経て廃棄されていたことが確認された。この洗草は、国王の御諱・御押・御筆を水洗して消し去ることで資料の廃棄を可能とする、朝鮮独特の慣行であることが明らかとなった。 さらに、朝鮮後期、全羅道霊岩郡の洞契(村内の相互扶助を目的に結成された自治組織)で作成された物品の引継目録「場岩洞契開元録」の内容を分析した。同目録には、17~18世紀、洞契が所有した文書の出入が詳細に記載されており、民間文書の保管の実態をうかがう上で極めて貴重である。「場岩洞契開元録」を中心に、「洞契案」(洞契の規範集)、「用下記」(支出簿)、現存する古文書を総合的に分析し、洞契における文書の作成・保管・廃棄の実態と変遷過程について考察した。 以上の研究成果については、成稿次第、国内外の学術誌に公表する予定である。
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