2016 Fiscal Year Research-status Report
漢代列侯喪葬儀礼の研究――皇帝・諸侯王との比較を通して見た――
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16K16925
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
邉見 統 学習院大学, 文学部, 助教 (70756890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中国古代史 / 秦漢史 / 列侯 / 諸侯王 / 喪送儀礼 / 漢墓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、皇帝・諸侯王との比較を通じて、漢代列侯の喪送儀礼について考察するものである。この目的を達成するため、2016年度には以下の活動を行った。 中国における現地調査としては、2016年8月に江蘇省の漢代の諸侯王墓・列侯墓を調査した。徐州市では獅子山漢墓などの楚王墓や王子侯墓の調査を、揚州市では広陵王やその一族の墓の調査を行った。その結果、陝西省の前漢皇帝陵と江蘇省の諸侯王墓・列侯墓との構造や立地・副葬品の差異について考察を深めることができた。 また文献史料や発表された発掘報告をもとに、前漢の列侯について考察し、その成果を以下の通り発表した。まず第32回学習院大学史学会大会(2016年6月4日、於学習院大学)において「前漢時代における周辺民族の列侯封建と漢朝政治」と題する報告を行い、周辺民族の投降者の列侯封建の政治的背景を考察した。歴史学研究会アジア前近代史部会2016年12月例会(2016年12月17日、於歴史学研究会事務所)において「南昌市西漢海昏侯墓と海昏侯劉賀」と題する報告を行い、近年発掘が進められている南昌市西漢海昏侯墓について、墓主の海昏侯劉賀と中央政治の動向を考慮しつつ、他の諸侯王墓・列侯墓と比較しながら考察した。さらに『学習院史学』第55号(2017年3月刊行)に「前漢前期における高祖系列侯の衰退―─高祖系列侯の紹封・復封・将軍職任用より見た─―」を発表し、前漢前期の列侯をめぐる政治情勢を考察した。 上記の活動によって、いまだ蓄積の少ない列侯墓や列侯の喪葬儀礼についての研究、これらの研究の背景となるべき列侯をめぐる政治史研究に対して自らの見解を公表することができた。2017年度には上記の研究報告や論文に対する他の研究者からの反応を踏まえつつ、研究を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年8月に中国江蘇省において漢代の諸侯王墓・列侯墓の調査を実施し、また南京博物院などで出土文物の調査も行い、陝西省の皇帝陵との墓の構造や副葬品の差異を検討するのに有益な情報を得ることができた。 さらに歴史学研究会アジア前近代史部会12月例会において「南昌市西漢海昏侯墓と海昏侯劉賀」と題する研究報告を行い、近年発見され、発掘の進められている江西省南昌市の列侯墓である南昌市西漢海昏侯墓について検討を行った。参加者との議論の中から、最新の発掘状況やその解釈について多くの情報を得ることができた。このほか、第32回学習院大学史学会大会(2016年6月4日、於学習院大学)にて「前漢時代における周辺民族の列侯封建と漢朝政治」と題する研究報告を行い、本研究課題が対象とする漢代の列侯について政治史的考察を加えた。 以上の活動を通じて、漢代の諸侯王墓・列侯墓について多くの知見を獲得することができ、2017年度の研究に向けて土台を築くことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度には中国江西省南昌市の南昌市西漢海昏侯墓を中心に列侯墓の調査を実施する。当該墓は出土文物から海昏侯劉賀を墓主とすることが確実である。さらに海昏侯劉賀は諸侯王から皇帝に即位し、その後に廃されて列侯に封建されたという特異な経歴を持つ人物である。当該墓の調査を行い、発掘関係者と情報を交換することによって、本研究課題の挙げる皇帝・諸侯王・列侯の比較という視点に対して有益な知見を獲得することができると考えている。 中国における漢墓の調査のほか、文献史料や衛星データに基づく考察を継続して進め、これらの作業を通じて得た情報をもとに、総合的に考察する。そして学会における研究報告や論文の発表のかたちで、得られた知見を公開し、他の研究者と議論したい。
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Causes of Carryover |
本務校における勤務の都合により、中国における現地調査が1回となったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度にも中国における現地調査を実施する予定であるが、勤務の調整を行うことにより、より多くの調査を実施したいと考えている。また、現地調査の実施にあたっては、より円滑に調査を行うために、日本において秦漢史研究を行う研究者を通訳として同行させたいと考えており、そのために2016年度に比してより多くの人件費を要する。上記により、2016年度に生じた次年度使用額を有効に活用できると考えている。
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Research Products
(4 results)