2017 Fiscal Year Research-status Report
漢代列侯喪葬儀礼の研究――皇帝・諸侯王との比較を通して見た――
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16K16925
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
邉見 統 学習院大学, 文学部, 助教 (70756890)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 漢代 / 前漢 / 列侯 / 諸侯王 / 皇帝 / 陵墓 |
Outline of Annual Research Achievements |
前漢の皇帝陵・諸侯王墓・列侯墓の比較を通して、漢代における列侯の政治的位置づけを検討するため、平成29年度には江西省南昌市の西漢海昏侯墓や湖南省の諸侯王墓の調査を実施した。 特に前者は、近年発見され、前漢の廃帝劉賀を墓主とする列侯墓として注目を集めている。劉賀は昭帝の死後、帝位に即きながらも廃され、後に列侯に封建された。よって、列侯とはいえ、抑圧された立場にあったと推測することが可能である。しかし海昏侯墓は、陪葬墓を含む墓園が確認され、また主墓からは大量の副葬品が出土した。こうしたことから、劉賀は列侯としての格式によって葬られたと言える。 また、他の列侯墓は周辺の開発の影響を受け、墓園や墳丘が破壊されていることがほとんどであり、これまで列侯墓の構造を検討することは困難であった。これに対して海昏侯は上記のように主墓だけでなく、陪葬墓を含む墓園全体の保存状態が良好である。よって現状では、海昏侯墓を列侯墓のモデルとして扱うことが可能であると考える。 そして平成29年度の現地調査では、遺跡の管理担当者の解説のもと、海昏侯墓ならびに周辺の関連遺跡の調査を実施した。本研究では平成30年度、現地調査によって得られた知見をもとに、列侯墓の分析を進めたいと考えている。 上記の現地調査のほか、文献史料および発掘報告書をもとに考察を行い、その成果を第29回日本秦漢史学会大会において「前漢の諸侯―諸侯王・列侯・関内侯―」と題して報告し、また『学習院大学文学部研究年報』第64輯に「高祖系列侯と「復家」措置」として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度には中国江西省・湖南省において列侯墓および諸侯王墓の調査を行い、一般には公開されていない列侯墓(海昏侯墓)など、現地の遺跡管理者からの提供も含め、有益な情報を得ることができた。 また、第29回日本秦漢史学会大会において「前漢の諸侯―諸侯王・列侯・関内侯―」と題して報告し、列侯を中心として前漢時代の「諸侯」を考察した。さらに『学習院大学文学部研究年報』第64輯に「高祖系列侯と「復家」措置」を発表し、文献史料をもとにして前漢後期における列侯の政治的位置づけを考察した。 以上のように、平成28年度の活動の成果を活かしつつ、本年度も研究を進展させることができた。ただし本務校における勤務の都合から現地調査の実施が1度のみとなったことなどにより、研究期間の延長を申請したことから、「(3)やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度には、河南省の梁王墓など、東方の諸侯王墓の調査を実施する予定である。梁王国は前漢景帝の弟劉武に始まる王国である。劉武は皇帝最親の諸侯王として権勢を誇った後、失脚した。そして劉武の死後、梁王国は分割された。このような皇帝との関係性や政治的地位の動向を踏まえ、これらが諸侯王の喪葬に影響を与えたか否か、与えたとすればどのように影響があらわれたのか。こうした点を検討したいと考える。そして平成29年度に調査を行った廃帝劉賀を墓主とする海昏侯墓とあわせて検討することで、諸侯王・列侯の政治上の位置が喪葬に影響を与えたか否かを考察したい。 このほか、文献史料や衛星データに基づく考察の成果をもとに、総合的に考察する。そして学会における研究報告や論文の発表のかたちで、得られた知見を公開し、他の研究者と議論したい。
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Causes of Carryover |
本務校における勤務の都合により、中国における現地調査が1回となったため次年度使用額が生じた。平成30年度には中国調査のために十分な時間を確保し、未調査の諸侯王墓・列侯墓の調査を行い、さらなる研究の進展を図りたいと考えている。
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Research Products
(2 results)