2016 Fiscal Year Research-status Report
ロシア帝国統治下のムスリム社会における離婚・婚姻解消の法社会史的研究
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16K16926
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
磯貝 真澄 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (90582502)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中央ユーラシア / ロシア帝国 / イスラーム法 / ロシア法 / 法多元主義 / 家族法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、19世紀後半~1905年のロシア帝国ヴォルガ・ウラル地域のムスリム社会で生じた離婚や婚姻解消の問題を歴史文献学的・法社会史的手法で分析し、そこにおけるイスラーム法由来の規範とロシア法・ロシア的法文化の複合・多元状況を明らかにすることである。これを踏まえて平成28年度は主に、研究課題「離婚や婚姻解消をめぐる問題群に関係する帝国の法と司法・行政制度、およびその運用における、法的複合・多元状況の解明」のための作業である、国内外における史資料の所在調査と収集、収集した史資料の読解と分析、分析内容の口頭報告による公開・再検討を進める計画だった。 史資料の所在調査と収集については、国内の大学付属図書館等に所蔵されるものや購入すべきものの収集は順調に進めた。国外に所蔵されるものについては、ロシア連邦ウファ市で所在調査と収集を行なう計画だったが、実施できなかった。これに替えて、8月16~27日にウズベキスタン共和国タシケント市に出張した際、本科研費による史資料の所在調査と収集も行なった。そして、タシケント東洋学大学付属東洋写本センター、および国立ナヴァーイー図書館所蔵の史資料の中に必要なものを見つけることができ、当初計画の通りでなくとも、ある程度の成果を得た。 収集した史資料、特にムスリムの離婚・婚姻解消に関係するロシア帝国の法令類の読解と分析は随時進め、その口頭報告による公開については、まずロシア史研究会2016年度大会で行なった。そこでロシア帝国法制史の専門家から助言を得て、分析不足を補った。さらに、その結果を第8回近代中央ユーラシア比較法制度史研究会で口頭報告し、近接する専門分野の研究者から助言を得て、必要な修正を施した。現在、これを学術論文にまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記「研究実績の概要」欄に記したように、研究作業の8~9割方は順調に進めている。ただ、ロシア連邦ウファ市における史資料の所在調査と収集ができなかったため、一部の入手可能な史資料をまだ収集できていない。これについては、次年度、容易に実施できるはずである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当初の研究実施計画の通り、研究課題「離婚や婚姻解消をめぐる問題群に関係する帝国の法と司法・行政制度、およびその運用における、法的複合・多元状況の解明」の結果を学術論文にまとめる。そして、もう1つの研究課題「流刑を科された夫を持つ妻が婚姻解消を求めた案件の解決方法を事例とする、帝国の法や司法・行政制度とムスリムの家族・共同体社会における法的複合・多元状況の法社会史的研究」に着手する。 この作業の中でロシア連邦ウファ市所在の図書館・文書館における史資料の所在調査と収集を行なう計画だが、ここで、上記「現在までの進捗状況」に記したように、昨年度実施できなかった史資料収集作業もあわせて行なう。これにより、史資料収集作業における若干の遅れを取り戻す予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、上記「現在までの進捗状況」欄に記したように、ロシア連邦ウファ市における史資料の所在調査と収集作業を実施できなかったためである。その旅費相当額を次年度使用額としている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記「今後の研究の推進方策」欄に記したように、次年度においては、ロシア連邦ウファ市で史資料の所在調査と収集作業を実施し、その中で平成28年度に収集できなかったものも収集する。その際の現地滞在期間は、当初の計画よりも長く確保する予定である。つまり、次年度使用額については、当初計画の通りに、ウファにおける史資料収集作業の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)