2019 Fiscal Year Research-status Report
ロシア帝国統治下のムスリム社会における離婚・婚姻解消の法社会史的研究
Project/Area Number |
16K16926
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
磯貝 真澄 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (90582502)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | イスラーム法 / ロシア法 / 家族法 / 婚姻 / 離婚 / ムスリム / タタール / バシキール |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 史資料の所在調査と収集について、報告者は、前年度からの課題であった、ロシア連邦カザン市とウファ市における作業を実施した。カザン市ではカザン連邦大学ロバチェフスキー名称学術図書館手稿・稀覯本室、ウファ市では特にバシコルトスタン共和国国民文書館を利用し、後者では計画通りオレンブルグ・ムスリム宗務協議会の公文書群から必要なものを写真撮影によって複写した。ウファ市では、ロシア科学アカデミー・ウファ連邦研究センター歴史言語文学研究所のアイブラト・V・プシャンチン所長とマルスィル・N・ファルフシャートフ研究員より助力を得た。 2. 史資料の読解と分析について、報告者は、特に交付申請書記載の研究課題(1)については前年度行なった口頭報告の結果を踏まえて再考し、国際ワークショップでの口頭報告、および国際カンファレンスに際して公刊された論集への寄稿というかたちで再度まとめた。研究課題(2)のための作業も行なったが、その結果の公開まで進めることはできなかった。 3. 研究結果の公開について、報告者は国際ワークショップで、「Muslim Marriages and Divorces in the Late Nineteenth-Century Volga-Ural Region」という口頭報告を行なった。その内容は、「法多元主義(legal pluralism)」の概念を使ってロシア帝国の法制度を説明することの適切性を、法制度のみならず、その運用実態から得られる情報もあわせ、議論するものである。報告者はこれを論文にまとめ、ロシア連邦オレンブルグ市で開催された国際カンファレンスの論集で公開した。 4. イスラーム法の専門家であるウラマーの研究を進める一環で、上述のファルフシャートフ研究員と共同研究を行ない、その研究成果を国際共編著の書籍『“My Autobiography” by Hasan `Ata' Gabashi in 1928: `Ulama' and Soviet Power』として公刊した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
報告者が本研究課題の進捗状況をやや遅れていると評価する理由は、次の2つである。 1. ロシアで行なう計画だった史資料の収集について、前年度に行なうはずだった作業を本年度実施したため、その後の史資料の読解と分析が当初計画よりやや遅れている。特に交付申請書記載の研究課題(2)のための史資料の読解・分析を計画通りに進めることができていない。 2. 2020年3月にロシアで開催された国際カンファレンスに出席する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の拡大状況をみて、それを取り止めた。これに伴い、研究結果の再検討と、一部、必要な史資料の収集に若干の遅れが生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した研究課題(1)については、部分的に公開してきた研究成果を学術論文1点にまとめ、公刊する。 研究課題(2)については、史資料の読解・分析を最後まで進め、その結果を口頭報告および学術論文として公開する。その際、国際ワークショップ等の機会を得て、ロシアまたは欧米の、複数の関連分野の研究者から助言を得るよう努める。これについては、新型コロナウイルス感染症の問題が続いてはいるが、わが国のみならずロシア等、国外においてもWeb会議が普及しつつあるため、機会が得られるよう情報を収集する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2020年3月に新型コロナウイルス感染症の拡大という問題が生じ、ロシアで開催された国際カンファレンスに出席できなかったためである。すなわち、計画していた研究成果の公開を実施できなかったことによる。 次年度における使用計画だが、原則として研究成果の公開のために使用する予定である。つまり、学術会議等における口頭報告、または学術雑誌等における学術論文公刊のために使用する(書籍・論文等の購入・取寄・複写代金、外国語校閲代金、旅費、郵送代金、その他)。
|
Research Products
(7 results)