2016 Fiscal Year Research-status Report
イスラーム改革主義の大衆的基盤についての研究:20世紀半ばのアルジェリアを事例に
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16K16928
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
渡邊 祥子 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部, 海外研究員 (20720238)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イスラーム改革主義 / アルジェリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、知識人の思想運動と考えられてきたイスラーム改革主義運動が、植民地期のアルジェリアにおいては大衆的社会運動として展開したことに注目し、その社会経済的、文化的基盤を明らかにすることである。 今年度は、イスラーム改革主義運動を含めたサラフィー主義と、イスラーム主義に関する先行研究の理論的課題に関する論考を執筆し、本研究の課題に関する既存の議論を整理した。そのほか、植民地期アルジェリアのイスラーム改革主義者が翻訳したフランス人著者によるメッカ巡礼記を題材に、植民地社会における文化とナショナリズムの関係を検討した英文論文を出版した。 また、2回の現地調査を実施して、研究遂行に必要な資料収集を行った。アルジェリアでの現地調査では、国立文書館において教育・学校関連のデータを中心に一次資料の閲覧を行った。収集した資料はアルジェリアのすべての地域をカバーしていないが、当該地域の公立学校の設立状況のデータや、社会経済データと突き合わせることで、1940年代のアルジェリア・ムスリムの教育実践にどのようなパターンがあったのかを分析する手掛かりとなるはずである。さらに、植民地期においてアルジェリアのイスラーム改革主義者が組織的に留学生を送っていた学問センターであったチュニジアのザイトゥーナ・モスクの教育と学生の活動について、チュニジア国立文書館を中心に資料調査を行った。これらのほか、フランスの文書館と図書館でも資料収集を行った。 今後は収集した史料を基に、アルジェリア・ウラマー協会の教育運動の社会的基盤ついて質的、量的な分析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究とその課題を検討した論考の執筆により、研究の具体的な課題を整理できた。 今年度の作業目標のうち、図書館・文書館にある統計資料や文書館史料の収集については、特にアルジェリア国立文書館において大変貴重な資料を閲覧できた。しかし、時間の制約と建物工事などの問題のために、予定していた県立文書館2か所での調査ができなかった。また、入手できた資料は地域的に偏りがあるため、今回入手したデータのみからアルジェリアの全地域に関する分析を行うのは難しい。 こうした事情から、アルジェリアのいくつかの地方を取り上げたケーススタディに関しては、作業が遅れている状況である。他方、フランスの文書館と図書館、チュニジアの文書館において、ウラマー協会の学校に関する非常に多くの情報を得ることができた。これらの資料も用いつつ、課題にアプローチする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
アルジェリア、チュニジア、フランスで収集した、ウラマー協会の教育運動と植民地期の教育実践に関する資料の分析を少しずつ進めていく。同じ時期の全国レベルのデータが入手できないとしても、地方ごとのデータを統計資料などと突き合わせることで、仮説構築、検証を行う方法を採る予定である。
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Causes of Carryover |
アルジェリアにおけるイスラーム改革主義による教育運動の発展を調査するために、チュニジアでの現地調査が必要と判明したため、アルジェリアでの調査に追加して、次年度予算の一部を前倒し請求してチュニジアおよびフランスでの調査を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算残額と合わせ、研究会開催や現地調査費用に充て、課題研究を遂行する。
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