2017 Fiscal Year Research-status Report
近代フランスにおける地方上級行政官の近代的変容に関する研究
Project/Area Number |
16K16932
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡本 託 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (30611868)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 近代フランス / 官僚制度 / 専門職化 / 近代化 / 中央集権 / ローム・アルプ地域 / バス=ノルマンディー地域 / ラングドック=ルシヨン地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に関して平成29年度に実施した研究は、主に以下2つの成果をもたらした。1つ目は、前年度の海外史料調査で収集した史料の分析を基に、フランス第三共和政期の地方幹部候補行政官である県参事会員の登用論理における属性主義と能力主知を明らかにすることができた。そこでは、第三共和政期の議会政治的要因が作用することにより、県参事会員の社会的流動性が促進されたと同時に、それまでの政体とは異なる形で属性主義が継続され、能力主義の進展のみが社会的流動性を促進させたわけではなかったことを明らかにした。ここで得られた研究成果は、「フランス第三共和政期の地方幹部候補行政官登用における属性主義と能力主義―アン県参事会員およびドローム県参事会員を事例として―」として、『寧楽史苑』第63号(2018年2月10日刊行)に掲載されることとなった。また現在、第二帝政期におけるアン県参事会員とドローム県参事会員の登用論理を分析した論文を学会誌に投稿中である。 2つ目は、新たなケース・スタディーの地域として設定したバス=ノルマンディー地域のカルヴァドス県と、ラングドック=ルシヨン地域のピレネー=オリエンタル県における県参事会員の属性(出身地、生年月日、出自、財産、学歴)に関する個人データの収集をおこなった。具体的には、フランス国立文書館所蔵の分類番号F/1bI/155-180、F/1bI/297-400、f/1bI/436-530、そしてカルヴァドス県文書館所蔵の分類番号2M53において、カルヴァドス県参事会員52名、ピレネー=オリエンタル県参事会員45名に関する史料収集をおこなうことができた。この調査により、地方幹部候補行政官の属性の変化を明らかにし、それにより彼らが経験した専門職化、近代化の有無を把握することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展しているといえる。その理由として、研究開始からこの2年間でフランス国立文書館、ローヌ県文書館、アン県文書館、ドローム県文書館において十分な史料収集をおこなえたことが挙げられる。また、これらの史料の分析成果を刊行物として順次公開できたことにより、当初計画予定であったローヌ・アルプ地域における幹部候補行政官の近代化の実態解明に加え、他地域であるバス=ノルマンディー地域や、ラングドック=ルシヨン地域における同様の分析を開始する契機を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の前半は、現在学会誌に投稿中である、第二帝政期におけるアン県参事会員とドローム県参事会員の登用論理に関する論文の修正をおこない、同時に、博士論文において分析をおこなった中央の幹部候補行政官に関する研究成果と、本研究で得られた研究成果(ローヌ・アルプ地域)とを合わせ、加筆修正した著書『近代フランスと官僚制度』の完成を目指す。 平成30年度の後半は、平成29年度の海外史料調査で得られた、カルヴァドス県参事会員とピレネー=オリエンタル県参事会員に関する史料分析をおこない、各県における県参事会員の属性、資質、登用論理の変化を解明する期間に宛てる。具体的には、彼らの出身地、登用時の年齢、出自、学歴、そして登用の際に作成された請願書の内容の分析をおこない、そこで得られた研究成果を論文として逐次公開する。そして、これまで得られたローム・アルプ地域のローヌ県、アン県、ドローム県の県参事会員に関する研究成果に、新たな分析対象地域であるカルヴァドス県、ピレネー=オリエンタル県の県参事会員に関する分析結果を統合し、幹部候補行政官の近代的変容の有無を明らかにする。そして、ここで得られた成果と、これまでの研究で得られた中央の幹部候補行政官に関する研究成果とを比較することで、双方の行政的差異を明らかにし、近代化過程のフランスが志向した中央集権の内実を立体化する。
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Causes of Carryover |
(理由) 長期間の海外史料調査を実施するために、平成29年度の調査を平成29年3月15日から平成30年4月9日へと年度を跨いだことにより、次年度使用額が発生してしまった。 (使用計画) これまで得られたローム・アルプ地域のローヌ県、アン県、ドローム県の県参事会員に関する研究成果に加え、新たな分析対象地域であるカルヴァドス県、ピレネー=オリエンタル県の県参事会員に関する分析をおこなうことで、近代フランス地方行政システムの全体像をより明らかにできると考えた。この分析を実現するために、長期間の海外史料調査が必要となり、平成29年度から平成30年度へと年度を跨いだ海外史料調査に助成金を使用した。
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Research Products
(2 results)