2018 Fiscal Year Annual Research Report
'Der Mitteleuropaische Wirtschaftsraum' in Austria at the turn of century
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16K16934
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
杵淵 文夫 東北学院大学, 文学部, 准教授 (30637278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 西洋史 / オーストリア / 中欧 / 通商政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は世紀転換期オーストリアにおいて中欧諸国の経済連携が構想され、経済団体の協力の下で推進された経緯を明らかにしようとするものである。平成30年度は、農工業の諸団体における利害関係に主に焦点を当て、「中欧経済圏構想」の展開の過程を検討し、その結果を発表した。 実施計画にもとづいて資史料の収集を国内外で行った。国内では一橋大学、九州大学、東京大学等の図書館や資料センター等において、国外ではオーストリアの資料館において世紀転換期オーストリアの通商政策に関わる史資料を収集することができた。 また、検討結果としては、第一に、「工業家クラブ」がアメリカ脅威論を背景として「アメリカ集会」を1901年以降に開催し始めたこと、しかし第二に、「中欧経済圏」の議論を主導したのは「農林業利害擁護総本部」や「オーストリア工業家中央連盟」など相対的に輸出に比重をおく諸利害であったこと、そして第三に、「アメリカ集会」が「中欧経済圏」を議論するプラットフォームへと「変容」したこと、第四に、アメリカやドイツとの貿易に関する工業利害の分裂は解消されず、関税同盟によらない緩やかな経済連携の方法が妥協点として模索されたことが分かった。「アメリカ集会」で形成された構想はドイツの経済学者ユリウス・ヴォルフの呼びかけと合致しやすく、1905年の「オーストリア中欧経済協会」の設立に至ったことが分かった。他方で、政府の関与については、ドイツとの通商条約満了を控えた19世紀末以降に各経済団体に通商政策に関する提言を促したことが上述の展開の発起点の一つになったこと、「アメリカ集会」の動向に強い関心をもっていたこと、明確ではないものの「中欧経済協会」を支援する傾向があることが判明した。 成果については口頭報告における議論や批判を再検討した上で、2019年度中に専門の学術誌で公表する予定である。
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Remarks |
上記は随時更新を予定。
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