2018 Fiscal Year Annual Research Report
Rural Society and Family in Late Antique Egypt
Project/Area Number |
16K16935
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高橋 亮介 首都大学東京, 人文科学研究科, 准教授 (10708647)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エジプト / パピルス / 古代末期 / ローマ帝国 / 農村 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地中海世界における古代末期の状況について、エジプトからの出土文字資料であるパピルス文書、とりわけ4世紀エジプトのファイユーム地方由来の家族文書群を分析することで、新たな光を投げかけようとした。本研究は、個々の史料の内容と解釈を最新の研究成果に照らし合わせ再解釈し、そこに現れる人間関係を再構成しつつ、「地域的環境」「行財政と司法」「経済活動」の3つの主題について掘り下げることを目的とした。 研究の最終年度にあたる2018年度は、前年までに明らかになった個別の研究課題を追求した。特に砂漠地帯におけるローマ軍の役割に関して、古代末期から遡るものの帝政盛期の状況に関する論文「エジプト東部砂漠のローマ軍と『蛮族』」を作成し発表した。また来日したパピルス学者・古代史家ブレンダン・ハウグ氏と意見交換をし、ファイユームの水利に関する氏の論文「水を統治する」の翻訳を通じて最新の環境史研究の理解・紹介を行った。しかし分析が遅れていた「アウレリウス・イシドロス文書群」の読解は、当初の想定以上の関係史料があることが分かり、具体的な成果をあげるには至らず、今後の課題として残された。 本研究全体を通して、古代末期ファイユームの自然環境については他時代・他地域との比較のなかで、その特質を明らかにした。ファイユーム周辺部でも西部と東部では状況が異なり、同時代の農村部からの史料といえどもひとしなみに扱うことには注意が必要である。またローマ軍の活動について少数ながら要所に配置されていたことを示した。ただし、それがどの程度の効果を持ったかについては、さらなる検討の余地がある。また人間関係および経済関係については、比較対象とした2世紀の状況との類似点も目立ち、検討した史料から明らかになる状況を直ちに古代末期の特徴とするには慎重にならざるをえない。
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