2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study of the offering rituals in the Ancient Egypt: a comparison of pictorial, textual and archaeological evidences
Project/Area Number |
16K16943
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
矢澤 健 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員准教授 (10454191)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古代エジプト / 供物 / 祭祀 / 中王国時代 / 土器 / 典礼 / ダハシュール / アブ・シール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エジプト中王国時代の墓や供物奉献活動の場で発見されたミニチュア供物容器のセットの規格性に着目し、その背景となる典礼について検討することが目的である。平成30年度では、図像・碑文資料に見られる供物容器と実物の土器との関係について、2遺跡の調査・分析に基づく成果が得られた。 ダハシュール北遺跡では、当該遺跡の中王国時代で最大規模の墓が昨年度発見されており、既に盗掘を受けていたが、石棺の使用や副葬品の内容は被葬者が高位の人物であることを示していた。ここから発見されたミニチュア土器は、既存の当該遺跡のものより良質だが、当時の王族の墓で発見された例よりは質的に劣っていた。ミニチュア土器においても、階層によって質的な差異があることが示唆された。 アブ・シール南丘陵遺跡では、中王国時代の供物奉献祭祀遺構で遺構内部に収められた土器と、外部で繰り返し行われた奉献祭祀で使用され、廃棄されたミニチュア土器との比較を行った。内部は精製、外部は粗製の土器で質的な差が顕著だが、器形や構成には共通点が見られ、背後には共通の典礼があることが確認された。また、外部の粗製土器は約100年に渡る活動の過程で器形のバリエーションが減少し、土器の整形・調整が簡略化され、小型化していく傾向が認められた。一方で、器形の大まかな輪郭や色などは大きく変化せず、容器の外観が重要視されていた可能性が示された。供物容器には、儀礼上理想的な器形やその組み合わせの「祖型」が存在し、それを最もよく示しているのが内部の精製土器で、外部の粗製土器は当初「祖型」に近いものが当初製作・使用され、徐々に粗製化が進んで行った様子が看取された。 以上2つの遺跡の分析では、典礼を背景とする儀礼上理想的な「祖型」が存在し、階層差や経時的な変化によってその影響の濃淡が変化する可能性が示された。
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