2016 Fiscal Year Research-status Report
イーストケープにおける土器の類型化に関する民族考古学的研究
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16K16945
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平原 信崇 早稲田大学, 會津八一記念博物館, 助手 (60731180)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民族考古学 / 土器 / 土器づくり / パプアニューギニア / イーストケープ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、パプアニューギニア独立国イーストケープの土器づくりの民族誌による土器の類型化に関する民族考古学的なモデルの構築を目的とし、目的の達成に向けてイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者らとの関係に主な焦点をあて、イーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワークの解明を課題としている。 研究実施計画に則り、平成28年度は、ワリ島産土器の模倣土器を製作したイーストケープの製作者と(1)ワリ島の製作者との関係を明らかにするために現地でフィールドワークを実施した。模倣土器製作者の血縁者とワリ島出身者らに対する聞き取りから、そのライフヒストリーや製作技術の学習過程など、当初の計画どおりに情報を収集することができた。また、イーストケープの製作者と(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者との関係についても、平成28年度は次年度に向けた予備的調査として計画していたが、調査の進展により、イブライ区の土器製作技術や親族組織、婚姻に関する情報、イーストケープとノルマンビー島の人々の出自や系譜に関する情報など、当初の予想を上回る情報を収集することができた。 フィールドワークの結果、婚姻を契機とする製作者個人の転居によって模倣土器の製作を可能とする異系統の技術が獲得されたこと(1)、製作技術の違いが婚姻の少なさに起因する可能性があること(2)、イーストケープに存在する出自集団の多くがノルマンビー島からの移民に連なる系譜であること(3)が明らかになり、出自集団と婚姻の動態が社会的ネットワークの形成に深く関わっているという成果が得られた。なお、研究成果の一部は国際学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の実施計画は、研究目的を達成するための検討課題として挙げたイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者、の関係解明のうち、平成28年度の計画は現地でのフィールドワークによる検討課題(1)の重点的な調査研究と、検討課題(2)の予備的な調査である。また、平成29年度の計画は現地でのフィールドワークによる検討課題(2)と(3)の重点的な調査研究と本研究の総括である。 実施計画に則り平成28年度の現地フィールドワークを実施した結果、先述したとおり検討課題(1)に関する情報はもとより、調査自体の進展と現地協力者のサポートのおかげで、次年度に重点的に調査する予定であった検討課題(2)と(3)についても見込んだ以上の有益な情報を収集することができた。このため、細部については補填的調査を要する可能性はあるが、研究目的を達成するために必要不可欠と想定していた検討課題(1)(2)(3)を考察するための事例を得て、過去の調査成果を含めて総合的に検討できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の調査研究によって、イーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワーク解明のための検討課題(1)(2)(3)に関する現時点で必要十分なデータは収集することができた。当初、平成29年度は現地でのフィールドワークによる検討課題(2)と(3)の重点的な調査研究と本研究の総括を計画していたが、平成28年度に見込み以上の成果が得られたことから、現地でのフィールドワークは従前の補填的な調査にとどめ、むしろ本研究の総括に向けてこれらの最新の調査成果と既存の調査研究成果の総合的考察を推進していきたい。また、平成28年度の調査研究で得られた成果の一部についてはすでに国際学会等で発表しているが、その多くは未だ未発表である。今後は、本研究の総括的検討を進めながら、未発表の成果を積極的に学会発表や学術論文として公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、申請者の勤務先である早稲田大学會津八一記念博物館の職務の都合上、当初3週間程度を見込んでいた現地での調査期間を2週間に短縮せざるを得なくなり、この結果として現地滞在費が減少したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の調査研究の進展により、研究目的を達成するための検討課題に関する現時点で必要十分なデータを収集することができており、これらの最新の調査成果と既存の調査研究成果を総合的に検討できる状況にある。このため、今後は本研究の総括に向けて総合的な検討を進め、その研究成果を国内外の学会等で発表するための旅費として次年度使用額を使用したい。
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