2016 Fiscal Year Research-status Report
錆情報に基づく戦後復興期消滅古墳副葬品配列の復元研究
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16K16949
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
初村 武寛 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (80634279)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 埋葬施設 / 副葬品の銹着 / 有機質の錆化 / 甲冑のセット関係と用途 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古墳の副葬品金属製遺物から発生する錆の情報に基づき、消滅した古墳の副葬品配列・埋葬施設の構造の復元を試みようとするものである。 この研究の基礎となるのは、実際の遺物に遺存する錆の情報、具体的には錆化した有機質の情報と、ものが錆びつく情報である。こうした情報を遺物の熟覧を経て図化等により視覚化し、客観的に視認可能なものにすることが本研究の目的である。ただし、既に消滅した古墳の情報を復元していくことは容易ではない。過去にも数名の研究者が古墳の墳丘の規模について地籍図・古写真や戦時に米軍により撮影された航空写真を基に復元を試みたが、研究者により復元規模には差異があり、具体的な定点を見出すには至っていない。本研究は、この先行研究と同じく消滅した古墳の情報を復元しようとするものであるが、その基となるのは実際に現存する古墳副葬品であるため客観性を欠かず、追認・比較検討が可能なものである。 平成28年度は、大須二子山古墳の遺物を所蔵している南山大学人類学博物館および名古屋市博物館において資料調査を実施し、遺物の実測図の作成、観察、写真撮影、遺物の三次元計測を行った。資料の図化は大半が完了しており、副葬品の構造や銹着・接合関係を確認した。これにより、消滅古墳の副葬品の配列を復元するための一定の足掛かりを得た。 平成28年度に行った研究成果の一部については、平成29年以降に順次公表し、最終的には一冊の成果報告書を取りまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である愛知県大須二子山古墳出土副葬品の調査については、馬具・甲冑について順調に実測図作成を行い、検討を進めている段階である。また、鏡・鈴付銅器については三次元計測等を実施した。 一部の副葬品については、銹着関係や接合関係も明らかになっており、戦後の復興期に失われた古墳の副葬品配列の一部を復元するための足掛かりを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後には、大須二子山古墳出土遺物の図化を完了し、必要なものについては三次元計測を行うことが求められる。平成29年度内にこれらを完了することで、研究の目標達成に大きく近づくことができる。 また、大須二子山古墳出土遺物の類似例を調査・検討していく必要がある。各地への資料調査を早急に実施し、この課題も解決していく。
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Causes of Carryover |
資料調査等行った期間が計画よりも短かったため、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度当初から資料調査を実施することにより、大須二子山古墳の副葬品の調査を充実させる。また、類似資料への調査を含めて大須二子山古墳の年代的・階層的・社会的検討を行う材料としたい。
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