2019 Fiscal Year Research-status Report
大都市圏における多様な保育拠点の需給構造に関する国際比較研究
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16K16957
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
久木元 美琴 大分大学, 経済学部, 准教授 (20599914)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 保育 / 子育て支援 / 大都市圏 / 福祉サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度には,前年度までに進めてきた研究成果を基盤としながら以下の成果を得た.第一に,フランスの大都市圏および保育制度・都市環境に関するデータ・議論動向に加え,海外のケアの地理学と労働経済学や福祉社会学といった隣接分野におけるケアワークをめぐる理論枠組を収集・分析し,保育環境をめぐるフォーマルなサポート資源・環境およびインフォーマルなサポート資源に着目し,保育政策・都市政策・労働政策にまたがる課題を検討した.この成果は,国内地理学の代表的学会である日本地理学会および経済地理学会のシンポジウムにおいて報告し,学術論文として当該学術誌へ掲載された.これらの成果では,保育を含む福祉や社会保障制度の変化や都市の生活時間が保育の確保およびケアないし再生産活動においていかなる政策的課題と学術的課題を生じさせているかを明らかにした.パリを含む世界都市における「グローバル・ケア・チェーン」は,女性間格差と地域間格差とが連動して生じるケア構造の象徴的帰結といえる一方で,日本では認可保育所を中心とした供給体制のもと保育における外国人労働力の参入が抑制的で,海外都市とは異なる状況を示してきた.しかし,公務員数削減と非正規化にともなって保育士の労働環境は不安定化しており,多職種と比較した保育士の相対賃金は低下しており,フォーマルなケア労働力不足は特に大都市において顕著となっている.また,保育環境をめぐるフォーマルなサポート資源・環境およびインフォーマルなサポート資源に関する質的調査について入手されたデータの分析を進め,ケア拠点の立地については各都市圏内部の社会地域構造と制度的背景による差異,都市空間構造および労働時間・労働慣行と関連した配偶者を含む親族サポートおよび世帯間での相互扶助の実態についての検討を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
夏季に予定されていた国際学会発表について,自然災害のため現地への渡航が不可能となったため,研究成果の報告の一部が予定より遅れている。また,年度後半に予定されていた現地調査およびデータ収集についてはCOVID-19の影響によって実施が不可能となったため,インターネット等による入手・実施が可能な方法を検討するなど代替的な手段をとることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,研究成果報告およびデータ補足について,以下のように進める。海外現地調査によって補足を予定していた現地調査・質的データについて,COVID-19関連状況に鑑み,インターネットや郵送などによってデータ収集を補完する。これらのデータおよび前年度までに海外都市と日本の都市部における保育環境に関する分析結果を踏まえ,保育環境をめぐる制度環境と都市空間構造,フォーマル/インフォーマルなサポート資源に着目した保育政策・都市政策・労働政策にまたがる課題をとりまとめた研究成果を,国内学会・学術誌において発表する。
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Causes of Carryover |
参加予定であった国際学会への現地渡航が台風により不可能となったことに加え,COVID-19によりデータ収集の補足調査を予定していた3月現地調査が困難となったため。次年度使用額については,インターネットや郵送等を通じたデータ収集にかかる費用,動画会議システムを用いた学会や打ち合わせへの参加を可能とする機器や学術論文作成のための費用に充てる予定である。
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