2021 Fiscal Year Research-status Report
大都市圏における多様な保育拠点の需給構造に関する国際比較研究
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16K16957
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
久木元 美琴 専修大学, 文学部, 教授 (20599914)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保育 / 子育て支援 / 東京圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,東京圏の多様な保育拠点への需要に関連して,保育所等に通う未就学児を持つ世帯に対し,日常における保育所等以外のサポート資源,コロナ禍(2020年2月以降)における保育所等の休園や登園自粛要請の有無,その期間の対応状況やコロナ禍による育児負担について,インターネット調査会社を通じたアンケート調査を行った.結果の一部は以下のとおりである.1都3県の回答をみると,保育所の休園や登園自粛要請を経験した者は83.8%で,保育所に通えなかった日数は6日以上が58.0%,続いて5日間(16.9%),3日間または4日間が16.4%,1日間または2日間が8.6%であった.保育所に通えない期間の子どもの居場所として上位3位まで尋ねたところ1位では「自宅」88.1%,2位では「あてはまるものがない」(58.8%)に続き,「母方の祖父母の家」(16.9%),「父方の祖父母の家」(7.0%)が多く,3位では「あてはまるものがない」が77.4%であった.子の親の働き方について,コロナ後もほぼ毎回通勤している者が最も多く(回答者本人61.9%,配偶者・パートナー63.4%),在宅勤務が増加したが週数回は通勤が必要な者が,回答者本人15.1%,配偶者・パートナーでは17.4%であった.他方,コロナ後にほぼリモートワークが可能になった者は回答者本人で16.2%,配偶者・パートナーで12.1%であった.コロナ禍における困りごと・負担感に関する設問で該当者の多かった項目は,「外出自粛による子どもの精神的ストレスのケア」が57.3%,続いて「公共施設や公園を利用できず困る」が53.8%であった.以上から,コロナ禍でも通勤が必要な状態の中,自宅や祖父母宅を除く保育を託せる場所や機会はきわめて限定的である状況が明らかとなった.以上に加え,海外の保育拠点に関して文献を中心に資料収集を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予期していなかった世界的なパンデミックのため,海外都市の状況については現地への渡航が困難な状況が継続しており,国内での文献・インターネット等を用いた資料収集を中心に行った.東京圏の状況については,昨年度までに実施した調査・分析の結果をもとに保育サービス需給の特徴や課題に関する2つの論文を執筆し,今年度刊行予定の書籍へ掲載されることが決定している.加えて,コロナショック以前とは特に利用実態について大きく状況が変化しており,保育拠点の需給構造について国際比較や都市間比較を行うのみならず,緊急時下の多様な保育拠点の利用可能性やサポート資源に焦点をあてて分析を行うこととした.具体的には,東京圏の多様な保育拠点の需要に関連して,特にコロナ禍における保育所の休園や登園自粛などによる影響についてインターネット調査会社を通じたアンケート調査を実施し,こうした緊急時下における子育て世帯のサポート資源や多様な保育拠点の供給に課題が残されている実態を把握することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,今年度に実施したアンケート調査から得られたデータをより詳細に分析し,居住地域や家族構成,就業状況といった属性ごとの分析を進め,東京圏の特徴を明らかにする.また,海外都市の状況については,感染状況をみながら,国内で取得できる文献,行政・報道資料を中心にした把握・分析を進めると同時にインターネットを通じた関係者・当事者への調査の実施を企画している.以上の分析結果をもとに,その成果を国内学会で発表するほか,学術論文として投稿する.
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Causes of Carryover |
Covid-19により海外渡航が困難な状況が継続しており,当初予定していた海外調査や国際学会に関する旅費およびこれに関連する物品費・人件費が残額として生じた.これらは次年度,感染状況をみながら現地渡航費用(それが困難な場合にはインターネットを通じた文献収集やオンライン調査に必要な物品を含む費用),研究成果の発表に関する国内学会や論文作成・投稿のための費用および旅費として使用する予定である.
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