2016 Fiscal Year Research-status Report
ポスト個人化社会における人類学的家族研究の再構築:北欧型親族介護を事例に
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16K16963
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 絵里香 千葉大学, 文学部, 准教授 (90706912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家族介護 / フィンランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フィンランドの高齢者を支える「親族介護」の進展状況を包括的に明らかにすることを目的とする。フィンランド西南部のある自治体に暮らす高齢者を中心的な調査対象とし、彼らの「家族」の多様性と制度外ケア関係についてインタビューを実施してきた。具体的には、高齢者の家族史や親族関係の拡がり、現在の高齢者とその家族の地理的配置、接触頻度、買い物や安否確認や生活に関わるアドバイスといった広義のケアの概要、各々の事例について行政や第三セクターによる介護サービス受給のプロセスを確認することで、公的・私的介護の境界設定と協力関係形成のプロセスを把握しようと努めてきた。 2016年8月~9月および207年2月~3月に、フィンランド南西部で計2ヶ月強に渡るフィールドワークを実施した。行政サービスを多くは利用していない高齢者を中心に家庭訪問を行い、1件につき1時間~1時間半程度のインタビューを行うことで、ライフヒストリーや現在の家族状況についての語りを採取した。 同時に、親族介護への期待が高まる背景として、現地の社会福祉政策の動向、特にSOTE改革とその前段階としての在宅介護の民営化をめぐる議論および実践の動きの把握に努めた。 これらの研究の成果報告として、これまでの調査結果の中から特に親族介護に関わる部分についてまとめ、国際人類学・民族学科学連合(IUAES)の中間会議、ヨーロッパ社会人類学会(EASA)の研究大会、および北欧社会学会(NSA)等の国際会議で口頭発表を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年夏季のフィンランドでの実地調査は概ね順調に進められた。一方で、2017年冬季の調査は、現地でノロウィルスとインフルエンザが流行していたために、介護施設の面会謝絶状態が続き、体調を崩す高齢者も多かったために、アポイントを取ることが困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も予定通りのペースでインタビュー、参与観察を進めていきたい。病気の流行は(特に冬季は)しばしば起こることであるが、これについては対処することが難しい。こうした期間には高齢者を対象とした調査ではなく、行政の社会福祉制度改革をめぐる動きを中心に調査することで、親族介護支援をとりまく制度的状況を明らかにしていくこととしたい。
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Research Products
(6 results)